9: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/07/29(火) 20:02:05.20 ID:YJpQUpwa0
「よく見付けたな」
「まぁねぇ」
虚節は、言ってしまえば怪異のツチノコのような存在だ。
存在自体は仄めかされているものの、出現率の低さと見つかりにくさは怪異の中では群を抜いている。
そうか。
ならば忍野や影縫では手に負えない理由も納得できる。
臥煙先輩だろうと不可能に近い。
この世界中を探し回ったところで、俺くらいしか適任はいまい。
……ならば、もう少し吹っ掛けてみるか。
「成程成程、状況は大方理解出来た。だが虚節相手に一千万では安過ぎるぞ。桁が一つ足りないんじゃないか?」
「そう言うと思って、臥煙先輩からは話術巧みになんとか二千万以内に収めろ、って言われてるんだけどねぇ」
あっさりと、忍野は食えない笑みを浮かべてそう言った。
「……それを俺に言ってどうする」
「僕に話術なんて、柄じゃないだろ。それこそ貝木、お前の分野だ」
それに、と忍野は続ける。
「単なる被害者は、助けてあげなきゃ駄目でしょ?」
「……お前のお人好しに俺を付き合わせるな」
忍野の台詞に思わず、気が昂ぶってしまった。
俺は何も悪事に誇りを持っていて、悪事以外には手を染めん、なんて言う程にはまだ性根も捩けていない。
金さえ貰えば俺は人助けだろうがボランティアだろうがする。
だが可哀想だから、だとか、報われないから、だとか。
たかが人助けにそんな理由を付けるから不純なものになるんだよ。
俺は金の為だけでいい。
金は要らんと言いながら名誉喝采という下心を持つ正義の味方よりも十二分に純粋じゃないか。
報酬を一切求めない人助けなど、気持ちが悪いだけなんだよ。
「僕だって君に自分の思想を押し付ける気はさらさらないよ、貝木泥舟」
「…………」
「その被害者っていうのが、阿良々木くんみたいなんだよね」
阿良々木、か。
あいつもつくづく怪異と縁のある奴だ。
自ずから災害の渦中に飛び込んでおいて、今まで良く生きていると感心する。
だが阿良々木だから何だというのだ。
あいつとは腐った縁こそあれど助けてやる義理もなければ情なんてある筈もない。
「それにね……守秘義務として言わないでおこうと思ったんだけれど、事の言い出しっぺは、ツンデレちゃんなんだよね」
ツンデレ……?
「誰だそれは」
「戦場ヶ原ひたぎだよ」
「…………」
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