過去ログ - みんなで百物語
1- 20
40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga sage]
2014/08/08(金) 03:05:37.44 ID:PhTSrtL30
ざわざわと声がする。
ざわめきに似た音を擦りだす、中庭の木の葉が風に揺れている。
ざわざわと葉が擦れる。ざわざわと。

縄を掛けるのに適している。誰かがそういった。
それは変哲のない木。常緑で冬も緑に茂っている。

「さびしくないよ。」

ざわざわと葉が擦れる。古い病院。建物にガタが来ていて、場所をもっと交通の便のいいところへ移すと聞いた。
建物は解体するらしい。あの木も切られるのだろう。後には老人ホームを作るそうだ。
ざわざわと声が大きくなる。黄色いメットの作業員達が動き回りはじめた。

「薄気味悪いなここは。」

人気の無くなった廃病院。空はうす曇りで陰気な影を作っている。
木が葉を風で揺らす。ポタポタと雨でもないのに水を葉からたらしていた。

「うっわあ。なんだこれ。」

「どうした?」

「赤茶けた水が垂れてきやがった。気持ち悪い。」

「なんだお前びびってるのか?」

「何でそうなるんだよ。普通に気持ち悪いだろうが。なんか粘ついてるし。」

「鳥の糞じゃないのかそれ。」

「うえっ。洗ってくる。」

ざわざわと話し声がする。嫌がらせだ。無駄であるのに。
木を切り倒すための機械が唸る。びちゃびちゃと赤茶の雫を枝葉が落とした。
作業員達が騒然となる。
それでも作業は続く。木屑を噴き出して木が削れていく。
肉や骨を切るように赤茶の液体と白い木屑が切り口から出て行く。

「一旦作業をとめろ。」

「なんでだよ。」

「なんでって……。」

「切っちまえば問題ないって。この木邪魔だろ?」

チェーンソーが唸ってざわめきを消した。切り口が大きくなり終には木が傾ぐ。

「ヒイイィィーー。」

悲鳴のような音が何処からか聞こえてきて、木が倒れた。赤黒い水が切り株から吹き出る。
木を切っていた作業員がその水をまともに浴びた。

「あっ、あぐぅあっ。」

「どうした!?」

機会を足元に落とし、喉をかきむしる作業員。何かを喉から振り払おうとするようなしぐさをしていた。

「ぁ……ヒュー…ヒュー…。」

地面に仰向けになって苦しむ男の首に、くっきりと縄の跡がついている。
駆け寄った男は救急車を呼びしっかりしろと声を掛け続けている。

助けを求める男の手が、駆け寄った男の手を掴む。赤黒い水が同僚につく。
それは作業衣の上を逆上り、露出した首もとにべたりとついた。

「ひっ。」

私が見たのはそこまで、病院の屋上で自殺を繰り返す私の前にクレーン車の鉄球が迫っていた。

あの木に下がっていた連中には悪いが、私はこうなってほっとした。




以上になります。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
60Res/28.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice