2: ◆u7jijUkfI.[saga]
2014/08/03(日) 21:09:15.21 ID:gz+5vwBbo
――気が付くとわたくしは、暗闇に包まれておりました。
暗く、狭く、固い……箱の中でした。
手足を伸ばすこともできないほどの密閉された空間。箱の蓋は固く閉じられ、内側からはとても開くことができませんでした。
もちろん、助けを呼びました。声も出なくなるほど、泣き叫びました。
しかし……助けは来ませんでした。
どれほどの時間、その中にいたのかはわかりません。数十分か、あるいは数時間か……。
泣き疲れたのと、箱の中の空気が薄くなっていたのでしょう、段々と息が苦しくなってきました。
そして意識も朦朧としてきた頃……箱の外から音が。かちゃり……と、鍵の開く音でした。
恐る恐る箱の蓋を上へと押し開けたわたくしは、そこで初めて、自分が閉じ込められていたのが旅行鞄であると知りました。
周囲には見覚えのない光景が広がっていました。木々が生い茂り、土の地面が広がっていて……おそらく、祭り会場からも離れた森の奥だったように思います。
――誰が鍵を開けてくれたのだろう? その『誰か』はすぐそばに立っていて、わたくしは目を上げました。
夜の闇の中で、月の光に照らされたその姿、今でも目に浮かびます。
……そこにいたのは、『鬼』でした。
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