過去ログ - 雪乃「LINE?」結衣「そう!みんなでやろうよ!」
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818: ◆itPh.0zEvU[saga]
2015/12/20(日) 21:02:56.58 ID:IpRhQ/T10
屋根の下に置かれた自転車があまり濡れていないのを確認してから、俺は今来た道を戻っていく。

当たり前だがすでに由比ヶ浜の姿はない。それだけを確認してから、ぼそっと、ちょっとだけ気合いをいれるために呟く。

八幡「はあ……じゃあ行くか」

走るために軽く準備運動をするも、それでも心の中の後悔は消えない。

傘持ってくるんだった……。

今朝、快晴だからという理由だけで天気予報を無視した報いがこんなところでくるとは思わなかった。

由比ヶ浜には自転車で帰るといったが、今日は走って帰る。自転車で帰ってまたぞろ事故にでも遭ったらたまったもんじゃない。

……はあ。

雪乃「いくら両生類に憧れているとはいえ、わざわざ濡れにいくのは少し違うんじゃないかしら?」

八幡「……ヒキガエルに憧れなんて抱いてねえよ。今も昔も人間希望だ」

気合いを入れていよいよ走りだそうと右足に力を込めた瞬間、後ろから雨よりも冷たい声が飛んできた。振り向けば、雪ノ下が傘を片手に立っていた。

人のスタートダッシュ邪魔するなよ。悲しみに閉ざされて泣くだけの俺になっちゃうだろ。

八幡「……ずいぶんと早かったな」

雪乃「鍵を返すだけなのだから、そんなに時間は取らないわ。それにいつも由比ヶ浜さんを待たせてしまっているから……」

八幡「クセで早く終わらせるようになったのか」

ほんとこいつ由比ヶ浜のこと好きだな。見てて微笑ましい。

八幡「由比ヶ浜ならさっきちゃんと帰ったから安心しとけ。んじゃな」

とりあえず由比ヶ浜のことだけ伝えてもう一度自転車を取りに行くフリをする。

怪しまれないよう軽ーい感じでその場を離れようとしたつもりだったが、雪ノ下には通用しなかったようだ。

雪乃「さっき雨の中へ走り出そうとしたのは誰だったかしら」

八幡「いや、あー、あれは」

雪乃「……よくそれで由比ヶ浜さんを誤魔化せたわね」

八幡「あいつが場の流れに流されてくれたっていったほうが正解だな」

由比ヶ浜のときは雰囲気で突破できたのだ。『そういう流れ』ができていなければ、あの由比ヶ浜とはいえ俺が傘を忘れたことくらい簡単に見抜いただろう。

雪乃「……一応聞くけれど、傘は?」

八幡「家でスタンバってる」

雪乃「素直に忘れたと言いなさい……はあ」

ため息一つを間に挟み、雪ノ下が俺に傘を差し出してきた。え、やだなにこのイケメン。嫌いじゃないわ!

八幡「……それは違うだろ。お前が持ってきたんだからお前が使うべきだ」

雪乃「そうしたいのは山々だけれど、かといってあなたを見捨てるわけにもいかないでしょう」

八幡「見捨ててもらって構わないんだけど……」

雪ノ下の所有物なのだからもちろん雪ノ下が使うべきだと俺は考えるが、雪ノ下には雪ノ下なりの意地があるらしく無言で俺に傘を突きだしている。その勢いで突かれそうで怖い。

こんな調子で数分押し問答が続く。その間にも雨はどんどん勢いを増していた。

雪乃「なら、間をとって二人で使いましょう」

八幡「……」

雪乃「不満そうな顔ね、あなたのその顔……嫌いだわ」

いつかの日のような口調で俺の顔面を否定した雪ノ下は、しかしその不満すら無視して傘を開く。

雪乃「せめて、持つのは任せてもいいかしら?」


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