過去ログ - 零崎人識「殺し屋稼業……ナイトレイド、ね。傑作だなこりゃ」
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◆bZ4I4TB4eY
[saga]
2014/08/04(月) 08:33:38.25 ID:R0p2GdPx0
◇
一人の女性がいた。
彼女は、女性にしては背の高い、十人が百人、口を揃えて極上と断定するであろうプロポーションと、
少し癖毛のある、しかし見事に艶のある山吹色の短髪が男性の眼を惹いていて、
加えて胸元を大きく開けた露出の多い衣装が、男性にとっては最早毒そのものといっていい程にその女性に似合っている。
女性はむすっと無愛想な表情をしていたが、決して近づき難いというわけではなく、むしろ柔らかな印象を与えている。
彼女は昼食を取っていた。
並べられている食事は、どちらかといえば質素なそれであったが、
どうにも彼女が嘆いているのはそこではないらしい。
(…………酒)
そこに酒がないことを不満に思いつつも、『任務』として来ているのだと自分に言い聞かせ、
そしてやっぱり酒を欲する堂々巡りを脳内で繰り広げては消去し、自らのボスの顔を思い出して自重する。
「……酒が欲しい」
幾度目かのボスとの遭遇している最中。
「ッ!」
――殺気を感じた。
自分に向けられたそれではない、と彼女は直ぐに気が付く。
しかしそれは他の誰かに向けられたものですらない。
彼女でもなく、ここにいる誰かへと向かいすらしないその殺気は、
まるで殺意そのものが一人歩きしているようで、
一つの人格を成しているようで、
一つの個体であると主張している。
しかし――しかし恐ろしいのが、そんな事を無理矢理に分からせる事が出来るという事が、
彼女にとっての初めての出来事だった。
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