11: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/08/07(木) 22:53:56.71 ID:iJvGxYcs0
「川島さんこそ、大学はどうしたんだよ?」
大、学……?
頭の中にノイズが走る。
目の前一センチに猛スピードの新幹線が走り抜けて行くような錯覚。
なぜかポケットに入っていたカセットウォークマンが、きゅるきゅるとテープを巻く音を立てていた。
「あ、ひょっとしてサボりだな? いいよな大学生は、サボっても目を付けられないし」
そうだ、私は何を勘違いしていたのだろう。
阿良々木君は、高校生の頃から縁があって仲良くしていた男の子じゃない。
年下でお調子者だけど、どこか憎めない掛け替えのない友人だ。
「君に言われたくないわよ、不良学生のくせに」
「いいんだよ、学生のうちは遊ばないと」
彼はちょくちょく学校を抜け出しては街を徘徊しているのだ。
かと言って喧嘩をしたり迷惑を掛ける訳でもないので学校側やクラスメイトからは消極的な不良として認識されているらしいが、本当は彼が何をしているのか私は知っている。
私は彼がまだ小学生の子供の頃、見知らぬ土地で困っていたところを道案内をしてもらったことから知り合った。
初対面の見知らぬ女子高生を、誰に頼まれた訳でもなく引率するくらい、彼は小さな頃から正義感の強い子だった。
今も彼は、サボっている振りをして街でパトロールをしているのだ。
聞けば彼の両親は警察官らしいので、その影響は少なからずあるのだろう。
要するに、彼は正義の味方と言われるのが恥ずかしいだけなのだ。
そう思うと現在の態度も可愛く思える。
だとしても、高校生になってまで正義の味方を貫き通せるその一途さは誰にでも持てるものではない。
見る人によっては暗愚にも映るかも知れないが、自分の意志を持っている人間は、強い。
高校生にもなって正義の味方なんて、と本人も言ってはいるが、幾ら年を取ってひねくれても根幹の部分は昔から変わっていないのだ。
「変わらないのね、君は」
「……何が?」
「さあね」
生意気なところも、ひねくれてるところも、正義の味方なところも。
年月と共に自分さえも変わって行く中で、微塵もぶれずに進み続けることの出来る友人がいるのは、誇りでさえある。
私も、見習わなくちゃね。
「川島さん、暇だったらお茶くらい奢ってくれよ」
「自分からデートに誘っておいて、女の子にお金を払わせるつもり?」
「もう女の子なんて歳でもないだ……いってえ!?」
「あらごめんなさい、歳のせいか足元も覚束なくて」
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