5: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/08/07(木) 22:41:17.26 ID:iJvGxYcs0
「……じゃなかった。ありがとう、えっと」
そういえば名前も聞いていなかった。
「私、川島瑞樹っていうの。君は?」
「こよみ。阿良々木暦」
「え?」
阿良々木暦。
一度聞いたらそう簡単には忘れられない奇妙な字面のその名前は、偶然にも私の担当プロデューサーと同姓同名だった。
ちょっと待って。
そういえば彼……今、阿良々木暦と名乗った少年は、あまりにもプロデューサーと似通いすぎている。
ぴんと天を突くアホ毛、やる気のなさそうな厭世家のような瞳、全体的に脱力感溢れる雰囲気。
プロデューサーの小学生時代は、きっとこんな感じだったのではないだろうか。
「ちょっと……嘘でしょ」
「?」
怪訝な顔をする阿良々木君を後目に、近くにあった公園のトイレへと駆け込む。
気のせいじゃない。
肌がつるつるなのも、心なしか体調が良すぎるのも、総じて身体が軽いのも。
「瑞樹姉ちゃん、大丈夫?」
「…………」
急に駆け出した私を心配してくれたのだろう。
女子トイレだからか、遠慮気味に入口から顔だけ覗かせていた。
「……ねぇ阿良々木君、阿良々木君、何歳?」
「僕? 十歳だけど」
それがどうかしたの、と首を傾げるその様子は、年相応に可愛かった。
一縷の望みを託し、最後の質問を口にする。
「阿良々木君……今、西暦何年?」
「XXXX年だよ」
手洗い場の鏡に映っていたのは、如何にもガリ勉です、と全身で主張しているような三つ編みの少女の姿。
十三年前、高校に入学したばかりの、私の姿だった。
きゅるきゅると音がする。
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