8: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/08/07(木) 22:47:44.15 ID:iJvGxYcs0
そんなネガティブの底の底まで辿り着いてしまった感覚に、思わず口が勝手に開いてしまった。
「君は……昔に戻りたい、って思うこと、ある?」
「昔、ですか?」
突飛な質問にプロデューサーは嫌な顔一つせずに考え込んでいる。
「そうですね……過去に戻ってやり直したい事は山程あります」
けれど、とほとんど間を空けずに彼は二の句を継いだ。
「それでも今の過去あっての僕ですから、いくらみっともなくても、格好悪くても、僕だけはそれを否定するわけにはいきません」
「そうね……その通り、かもね……」
「川島さん?」
「何だかね、たまに……なんでこんなに頑張っているのか、わからなくなってしまって……」
女子アナからアイドルへの転身。
似通った業界とはいえ、その差異は大きい。
何よりフットワークの差が違う。
女子アナに比べ何が何でも名前を売らなければ前に進めないアイドルは、それこそ容赦のないスケジュールを詰められ馬車馬のように動かなければならない。
阿良々木くんも性格こそ変わっているが、仕事に関しては甘くはない。
若い子たちがどんどん有名になっていく中、身体に鞭を打ってまでして。
私は、どうしてこんなにも頑張っているんだろう。
「ごめんね、今だけちょっと嫌な女なの……明日には、戻るから」
「川島さん……結婚しましょう!」
「…………」
人間、あまりにも唐突な事を言われると思考が停止するようだ。
思考が試行錯誤、なんちゃって。
……高垣さんじゃないんだから。
数秒して、ようやく彼の言った文面を、本意はともかく単語としては理解出来た。
「それはなに? アイドルなんてやめてとっとと寿引退しなさいってことかしら?」
「痛い痛い痛い!!」
アイアンクローの要領で彼の頭を掴む。
女性に酷いことを言う男に人権は無いのよ?
「でも残念ねぇ、私そんな相手もいなければ候補すらいないのよねぇ。そりゃ将来を誓い合った恋人がいる阿良々木くんはいいわよねぇ、わかるわぁ」
「ち、違いますって! で、出る! なんか出る!」
さすがに痛そうだったので離してあげる。
失礼なことを言う方が悪いのよ。
「割れるかと思った……」
「失礼ね、そこまで握力強くないわよ」
「僕はただ、いきなり求婚したくなるくらい川島さんは魅力的ですよ、と言いたくてですね……」
「わかりにくいのよ」
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