9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/07(木) 23:19:08.95 ID:6aHb1HMq0
文才を感じる
10: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:20:57.20 ID:pDIBvgpo0
ともかくあっしは妹を、マルで実の娘であるかのように可愛がっておりましテ。オイと呼べばハイと答え、ナアと言えばナアニと答える……そんな妹が可愛くて可愛くて仕方ありませんでした。
仕事の方でも、そうですね。……あっしが植えた苗にミチコが水をやる、あっしが切った枝をミチコが集めるという具合でしテ。それはそれは仲が良く……。
へへへ、どうも相すいやせん。惚気話に付き合わせてしまいやして。しかしここが大切なお話でして……フウーッ……ああ失礼旦那。灰皿を……エエどうも。ドウモ……。
11: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:23:52.64 ID:pDIBvgpo0
ミチコは誰にでも愛想が良く、あっしと違って皆の人気者でゲした。
お空の上にある太陽に負けないくらい、明るい笑顔で庭仕事をするモンですから。
小さい頃から他の庭師に、可愛がられて育ちました。
あっしは気が気じゃありませんでしたね。アハハハ……アハアハアハ……可愛い妹をそこらのキタネエ庭師にやれるかと、鼻息荒く妹の周囲を、犬のようにグルグル回っておりましたよ。
12: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:26:04.23 ID:pDIBvgpo0
ある日、あっしは目ざとく気付いちまったモンでげして。
貴族の若様が、ミチコに『イロ目』を使ってる……訳でゲして。
確かにミチコは、それはそれは可愛いモンでしたが、まさか若様の目に留まるとは思いもしませんでしたナ。
頭痛が痛いというバカな言葉が出ちまうのも無理は無いですよ。
13: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:28:03.31 ID:pDIBvgpo0
貴族と庭師とじゃあ、それはもう身分が違うって騒ぎじゃあありませんからね……あっしは若様のお気持ちに気付きましたが、ナンとも言わずに日々を過ごしておりました。
しかし、どうにもオカしい。……若様はどうやら、本気なようでゲして……へへへ、兄としては喜ぶ所なんで御座いましょうが、どうにも受け入れられなくてですね。
若様が日ごと、ミチコとの距離を詰めていくのを、歯ガユイ気持ちで見ておりましたよ。
14: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:30:29.27 ID:pDIBvgpo0
しかしまあ、あっしはトコトン運が悪い男でして。
……磨き終わったノコギリ一丁を、庭の石蔵に仕舞おうと思うた、夕暮れ時の頃です。
石蔵の影で、若様とミチコが……チッスをしているのを、見ちまいましてね。
……ヘエ……キッス、ですか。……どうも相すいません。田舎者でげして。
15: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:32:34.13 ID:pDIBvgpo0
兎も角あっしは、ウスラ汚え嫉妬を一摘みと、兄として祝福してやろうという気持ちを抱えて、自分の部屋へ帰ったもんでして。
ただ、ナニ……その後がいけませんでしたナ。
そうだ、妹が若様に嫁ぐってえんなら、兄として何かやらんとな……ときたもんです。今思うとなんとも気が早い……田舎モンな訳でゲスからな。カッテがわからん訳でして。
あっしは懐にカネを突っ込み、古びたコートを羽織って、外へ飛び出したのです。町へ降りて何か買ってやろうと息巻いておりました。……初めての事でしたナ。夜に出歩くというのは……。
16: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:35:33.33 ID:pDIBvgpo0
あっしが手入れした庭を横切り、正門へと出向いた訳ですが、
何やら様子がオカシイ……。
正門の前に、見慣れぬ馬車が一台、停まってるじゃあありませんか。
何分、夜に出歩くのは初めてでゲスので……見慣れぬのも無理は無い訳ですが。
17: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:37:44.85 ID:pDIBvgpo0
馬車の周囲には、カイゼル髭にシルクハットという……何やらウサンクサイ輩が数人おりましテ。
その中に、ナント……若様がおられるのを、見ちまいましてナ。
こいつはいよいよオカシイぞと、あっしは訝しんだ訳です。
18: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2014/08/07(木) 23:40:00.81 ID:pDIBvgpo0
そのうちにバタンと扉が閉まり、ぴしゃんという鞭の音がします。
こいつはいけねえと、あっしは無我夢中で、馬車の後ろに掴まりました。
ゴトゴトと馬車は山道を進みます……あっしは見つからないよう細心の注意をはらいながら、チラと窓越しに馬車の中を見ました。
若様は、カイゼル髭の輩どもと、なにやら下卑た笑みを浮かべながら話をしているのです……。
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