過去ログ - P「嵌張待ち」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/08/09(土) 20:58:48.98 ID:E9jfhbLG0

――思い出すのは夏の青さと飛行機の轟音――


3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/09(土) 21:00:08.20 ID:E9jfhbLG0

「緊張するなぁ」
姉ちゃんの隣の男がそう言った。ボクはそれを遠目から眺めていた。
彼は痩躯で、ここら辺じゃ見ない感じの男だった。肌もあまり日に焼けていない。腕も細い。
もやしっ子。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/08/09(土) 21:01:58.98 ID:E9jfhbLG0

姉ちゃんの民宿には少ない親戚と多すぎる知り合いが集まって、姉ちゃんの帰りとなじみのない来訪者を待ちわびていた。
ボクは一人抜け出し、少し早めに彼を覗きに行っていた。遠目から、二人に気づかれぬように。


5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/08/09(土) 21:03:10.78 ID:E9jfhbLG0

二人が民宿に入ったのを見届けてから、ボクは少し外を歩いた。夏の暑さで肌が焼ける。
海は広く青く穏やかで、なんとなく姉ちゃんに似ているような気がした。
そして、言いようのない寂寥感を感じた。


6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/09(土) 21:04:26.14 ID:E9jfhbLG0

女の人が母親に男性を紹介する、ということはそういうことなのだろう。
喜ぶべきことなんだろうけど、ボクは素直に喜べなかった。
その理由もなんとなく思い浮かぶが、小さな矜持を守るために頭を振りその雑念をかき消した。


7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/09(土) 21:05:32.18 ID:E9jfhbLG0

ボクが民宿に戻ると男たちがジャラジャラと亡国の遊戯に興じていた。
(いつの間に?)
そんなことを思いながら姉ちゃんを見ると姉ちゃんは「仕方ないね」とでも言いたそうな顔をして、暖かく苦笑していた。
卓を囲む面子には彼も混じっている。おそらく彼を見定めるための囲みになったのだろう。じっちゃんの好きそうなことだ。


8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/09(土) 21:06:39.50 ID:E9jfhbLG0

そんなことで人間性など分かるはずもないだろうに――

ボクの心中とは関係なく賽が振られる。


9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/09(土) 21:07:30.71 ID:E9jfhbLG0

姉ちゃんの隣に座り、彼の手さばきを観察する。
牌山までの最短距離を辿り彼の手先が摸打を繰り返す。
打ち慣れてるな。そう思った。



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/09(土) 21:09:16.75 ID:E9jfhbLG0

娯楽の少ない田舎ではちょっとした刺激が喜ばれる。
ご他聞に漏れずここでもこの遊戯は多くの人が嗜むものになっている。年配にもなればもう慣れたものだ。
そんな面子に囲まれても彼の腕は見劣りしなかった。だから打ち慣れてるなと思った。
きっとそれはいいことではないのだろう。


11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/09(土) 21:10:42.89 ID:E9jfhbLG0

中盤、彼にこんな手が入った。
5r67p 4445568s チー657m

ドラは7m。タンヤオドラ赤の3900聴牌である。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/09(土) 21:12:52.19 ID:E9jfhbLG0

もし姉ちゃんに声をかけられていたら。東京に行く彼女に何か一言言えたら。
行かないで――と。それとも素直な心中を吐露出来たら。
きっと姉ちゃんとの関係は変わっていたのだろう。


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