33: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:15:39.94 ID:kQ+7QgS/o
公共交通を数本ほど乗継いだ場所にある養成所の、壁面が全て鏡張りされたスタジオ。
大勢の女の子たちに混じって、その少女の舞う姿が見える。
34: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:16:17.83 ID:kQ+7QgS/o
それでも、栄光の舞台を目指さむと日々奮闘する数十人ものライバルを見ると――
本当に自分は芸能界への狭き階段を昇っていけるのだろうか……と云う類の思考を禁じ得ない。
無論、そんな自信の無さや幾許かの恐怖など、一種、負の情念は誰でも持つことだろう。
35: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:17:08.57 ID:kQ+7QgS/o
大勢で同じ動きを舞うことしばし。
頑張った成果か、前回踏めなかったステップをこなせるようになり、少女は足許を見ながら笑みを浮かべる。
36: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:17:48.32 ID:kQ+7QgS/o
養成所で修練していれば、そんな人物がやってくるのはままあること。
彼女は、その人物を意識しないように、ひとまず今は練習に集中するようにと、自ら云い聞かせた。
しかし逆に、インストラクターが彼女のその行動を差し止めるように呼ぶ。
37: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:18:26.67 ID:kQ+7QgS/o
・・・・・・
年度が変わり、新しい一年が始まってから一箇月が過ぎた日曜の午後。
38: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:19:10.79 ID:kQ+7QgS/o
大型連休中だと云うのに、世間はそれを手放しで歓迎できていない。
つい先日発生した、未曾有の地震の所為だ。
39: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:19:53.54 ID:kQ+7QgS/o
帰宅後、母親が用意していたおやつへ目もくれず、玄関は姿見の前で、買ってきた春夏物の新作に身を包む。
ターミナル駅近くのブティックでこの服を試着したとき、友達が「とても似合ってるよ」と褒めてくれた。
40: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:20:37.81 ID:kQ+7QgS/o
だが来訪者は、呼び鈴を鳴らしてすぐに戸が開くとは思っていなかったのであろう。
そこには、心底驚きたじろいだ様子で、郵便配達の人が立っていた。
曰く、簡易書留で郵便物が届いたらしい。
41: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:21:19.49 ID:kQ+7QgS/o
彼女は普段から元気溌剌だった。
クラスでも随一のムードメーカーであり、笑わせ屋であり、輪の中心にいた。
42: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:22:02.91 ID:kQ+7QgS/o
正直、彼女自身は結果に全く期待していなかった。
何故なら、柄にもなくあまりに緊張し過ぎて、本番で色々とトチったからだ。
会場へ向かっている刻は、まるで心臓が口から飛び出るのではないかと思うくらいどきどきしていたし、
43: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2014/08/10(日) 22:22:44.84 ID:kQ+7QgS/o
震える手で封を切り、おそるおそる中身を出す。
そこには『技量ではなく内面を見て判断し、ティンときたから合格』と良く判らない理由が綴られており――
その挨拶状の下に、しっかり整えられた様々な書類が束になっている。
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