過去ログ - 絵里「その花の色は海のよう」
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21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/10(日) 16:16:42.98 ID:PqSllGERo

 海未は何事もなかったように道を渡ろうとする。
 草木も枯れるほど白く焼き付ける横断歩道へと歩み出る。

 だめ、
 なぜだか分からないけど行っちゃだめ、
 私はあなたを放っておけないの、わかってよ、
 そんな言葉が胸の奥で爆発して耳鳴りになって
 あの子を引き留めろとさいなむのに声にはならない、
 今日のあの子がやけに早足に感じる、
 この足がもたつくせいであの子がまた遠ざかって見える、
 ほらもう渡りきってしまう、
 目に焼き付いた顔色と
 遮るものもなく肌を焼く陽射しのせいでまためまいが起きる、
 あの子も打たれてしまう、
 何も言えないまま直射日光に打たれてしまう――

「絵里、そろそろ信号が変わります」

 その声でまた転びかかった。
 ステップを踏むようにして独りで持ちこたえた。
 掴まろうとしたあの子の腕はもう、
 手の届かない向こう岸にあったから。



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