過去ログ - 舞田類「like a little girl」
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◆EyqsYGWDiw
[saga]
2014/08/17(日) 01:08:40.23 ID:C2LfeSHG0
数日プロデューサーと一緒に居て分かったが、彼女はそれなりに熱意も、そして技術もある人だった。
「山下さん、ステップ甘いです!」
「歳なんだから労ってちょうだいよ…」
後で知った事なのだが、彼女は女子大でチアダンスをしていたらしい――よってレッスンは想像以上に激しかった。
この事務所はプロデューサーがレッスンまで面倒を見るなんて、なかなか机の上の仕事でさえも大変だろうに、彼女は今それ以上の事をやっている。
「舞田さん、気を抜いたら駄目ですよ!」
すかさず彼女の声が飛ぶ。そうだ、俺はまだアイドルとしては半人前で、彼女を心配する前に自分をどうにかしなければ―…
前を向き直し、心を入れ替える。一歩前で踊るミスターはざまはどうやら3人の中でダンスは一番上手いらしい。
アイドルをやりたいと言い出したのは伊達ではないと言う事か。俺も負けていられない。もう少し、ファイトだ。
「皆さんが少しずつ上手くなって行くのを見ると楽しいです」
「お嬢ちゃん、踊ると人が変わるからね。ほどほどにしてくれると嬉しいんだけど」
「山下さんだって、最初の頃に比べて大分動けるようになってますよ。元々歌は上手いんですし」
俺達に見本を見せようと、レッスンの本を片手に一生懸命歌い、踊る彼女はとても魅力的だった。この頑張りを仕事に活かしたい。そう心から思う。
「硲さんは随分踊れるようになりましたよね!この中だったら一番ですよ」
「私も日々のうのうと暮らしている訳ではない。アイドルとして鍛錬は怠らないつもりだ」
そして彼女は俺達をよく褒めてくれた。
教師を辞め、アイドルの世界に飛び込んだ俺達を何も疑わず温かい笑顔をしてくれる彼女は少なからず俺達の支えになっていた。
誰だって不安なのだ、本当にこれで良いのか、なんて。
「舞田さんはいつも、とても楽しそうにレッスンしますね」
「うん、プロデューサーちゃんが頑張ってるから。俺ももっと頑張らないとね。このレッスンでもっとGrowingしてみせるよ!」
彼女が俺に飲み物を渡す。また、あの紅茶だ。今日も黄色いラベルのレモンティー。彼女はいつもミルクティーの方を飲んでいる。だからだろうか、彼女からはいつもスイートな香りがするんだ。
いつも下ろしている髪を、レッスンの間だけはひとつにまとめている。夏らしくて素敵だと思った。
少し汗ばんでいるのに、彼女からはとても良い匂いがしている。
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