過去ログ - トール「前と、後ろ。どっちがいい?」フィアンマ「どっち、も」
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9: ◆RxERbt62ozsf[saga]
2014/08/18(月) 23:52:15.32 ID:I4KJacCn0

それにしても、治癒術式の効き目が悪い。
自分の生命力で自分の怪我を治そうとしているのだ、当然というべきか。
楽しく喧嘩をしていくにあたって、もう少し治癒術式について学ぶべきだろう。

「っ…」
「…少し、休憩するか?」

一度"楽しくなってしまえば"気にならなくなる。
だが、普段の痛みへの耐性は常人のそれと大して変わらない。
プロの殺し屋でも傭兵でもないのだ、精神トレーニングも大してしていない。

「は、そうだな、悪い休憩」
「……先程手当をしていたのは右脚だったか」
「ああ。バッチリ折れてやがる、クソッタレ」

ズキズキする、なんて生易しいものではなくなってきた。
治癒する速度に対し、悪化が早すぎるのだ。
知らず知らず体重をかけてしまうのはどうにもならない。

「『主よ、我らが父とその御子よ。
  この者を癒し、その身を起き上がらせん奇跡を我が手に』」

詠唱の内容はあまりわからなかったが、語感からしてヘブライ語だろう。
ぼんやりとトールが判断している内に、フィアンマが廊下へ膝をつく。
右手でトールの右脚に触れると赤い光が淡く灯る。
ぬるま湯にでも浸かるかのような心地良さと共に、痛みが引いていく。

まるで、十字教における神の子のように。

「…たかが詠唱と右手かざすだけでそれか。すげえな」
「天使の力が専攻なんだ。神の如き者を信仰している」
「なるほどね」

『神の如き者(ミカエル)』といえば、右方と火の象徴だ。
火は生命力を司るとの俗説もある程、人間に対応する部分が多い。

「………もう、人は助けないんじゃなかったか?」
「……無言で強要していただろう?」

してはいなかったが、そういうことにしておいてやろう。

トールは立ち上がり、再びフィアンマの左手を、自らの左手で引く。
体重をかけても、右脚はちっとも痛みはしなかった。

「改めて進むか。目的地まで後少しだ」




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