過去ログ - 絵里「遠くの親類より近くの他人」
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2014/08/18(月) 05:42:56.72 ID:rARV+jsx0
 だがしかしこの絢瀬絵里、これでもクールビューティーで売っているのだ。 
 友人に「寂しいから泊まりに来て」など言いだせるはずがあろうか。否。 
  
  
 そこで絵里は思い直す。 
 そう、クールビューティーだ。 
 女豹の冠は伊達ではない。 
  
 ならばセクシーに、ひと夏のアバンチュールに身を焦がすのも悪くないのではないか。 
 絵里は奮起した。今までコツコツためてきたお年玉やお小遣いはこのためにあったのだ。 
  
 絵里の決して多くはない財産のうち、生き残ったのは豚さん貯金箱だけだった。 
 叩き割るのはかわいそうだからという、おおよそ肉食に似つかわしくない理由だった。 
  
  
 かくしてA→Zの段ボールは絵里の私財を生贄に特殊召喚された。 
  
 そして豚さん貯金箱が保護される一方で、彼は無残にもその短い一生を終えた。 
 無慈悲なロシア式開封法がその全身を真っ二つに引き裂いた。 
  
 潤んだ瞳の上目遣いと煽り一歩手前のムカつくスマイルでは、扱いに差が出ざるを得なかった。 
 顔をシンメトリーに引きちぎられるという、どんなアメコミヒーローも経験したことのないであろう壮絶な最期だった。 
  
 『なに、このために生まれてきたんだからいいのさ』 
  
 ぐしゃぐしゃになってもなお、彼は笑っていた。 
 たとえ自分が苦しもうと誰かのために在る、まさに夢のヒーローの姿だった。 
  
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