過去ログ - 春紀「苺の味」 -SS速報VIP

過去ログ - 春紀「苺の味」

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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:13:35.12 ID:twXknIUyo
それからの苺狩りの時間は、ちょっとよく覚えていない。
平時ならどれだけ食べても飽きたらないくらい美味かったであろう最新品種の苺様も、その時ばっかりは美味いと感じなかった気がする。
きっとそれでもそこそこの数は食べたんだろう。我ながらもったいない精神というか、貧乏人根性には恐れ入るもんだ。
なぜなら、気が付いた頃には舌が苺の酸味でしびしびしていて、お互いの真っ赤な口元を指して笑い転げていたからだ。
どんなことを話したんだっけ。どんなことしたんだっけ。あたしはきっとどうかしちまったんだ。よく覚えていない。

以下略

7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:15:10.54 ID:twXknIUyo
「春紀さんも晴と同じくらい食べてたと思うんですけど…」
「そりゃガタイの差だね。身体の大きさからして違うさ」

情けない声であたしにぶーたれる晴ちゃんに、力自慢のポーズを取って得意げに言ってやる。
この腕がこの優しい少女を殺すのだと思うと、今すぐにでも切り落としたくなった。

以下略

8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:19:24.74 ID:twXknIUyo
「……ちょっと疲れた？人気のないとこ行って休憩しようか」

なんだこれ。マヌケなナンパ男の誘い口上みてェ。計画立てた時はもうちょっとスマートな口上だったと思ったんだけどな。
もしかしたら、そういう連中も計画段階ではイケてると思ってるんだろうか？だとしたら、今度からはちょっとだけああいう手合にも優しさを持ってやろう。間抜けっぷりに同情する。

以下略

9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:22:20.67 ID:twXknIUyo
ごめん。晴ちゃん。聞こえないとわかって、心のなかでそう謝罪する。すぐに、楽にしてやるさ。せめて少しだって苦しまないよう。そんな身勝手。
晴ちゃんと手を繋いで歩く雑木林までの時間は、悪夢のように長くもあり、幸せな夢のように短かくもあった。

「……着いたよ」
「すみません」

以下略

10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:24:07.81 ID:twXknIUyo
なおも晴ちゃんの静かな声は続く。あたしは唇を噛む。晴ちゃんの顔が、見れない。
晴ちゃんはあたしが居辛そうにしているのに気付き、寂しそうに笑いながら身体を反対に向けてくれた。あたしもなんとなく半身になって、背中合わせになる。

「……春紀さん」

以下略

11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:25:45.71 ID:twXknIUyo
「ねえ春紀さん。知ってます？苺には甘味を感じる味覚を活性化させる作用があるらしいですよ」
「……へえ。いっぱい食べたし、だとしたら今何か食べたらいつもより甘く感じるのかな」
「そうだと思います。春紀さん、何かおやつとか持ってきてます？」
「お茶はあるけど……なんだか飲む気にならなくて」

以下略

12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:28:57.83 ID:twXknIUyo
「まさか、その友達と一緒に出かけて、一緒にお腹いっぱいそれを食べれて、一緒に笑い合って。……晴に、そんなことができる日が来るだなんて」
「やめろって」
「晴、本当に嬉しかったから。春紀さんのお陰で、夢が一つ叶ったから。だから、ありがとう。春紀さん」
「……馬鹿」
「……はい。晴は、ちょっとお馬鹿なのかもしれません」

以下略

13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:30:10.18 ID:twXknIUyo
「さっきの話の続きですけど」

今度は耳元で晴ちゃんの声が聞こえた。少し、くすぐったいと思った。

「さっきのって、どの？」

以下略

14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:40:41.77 ID:twXknIUyo
はじめに唇の柔らかさ。

次に、熱。

今までに味わったこともないような得も言われぬ甘さが口の中に広がり。

以下略

15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:41:38.12 ID:twXknIUyo

以下略

16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/18(月) 21:44:27.71 ID:twXknIUyo

「……ぷは」

それからどれくらい経ったのだろう。晴ちゃんにキスされてることを悟ったのは、それから随分経った後だったような気もする。

以下略

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