過去ログ - 咲「愛を失くした日」爽「愛が芽生えた日」
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74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/09/06(土) 00:09:27.05 ID:e+Py3xHv0
いつのまにか窓の外では灰色を帯びた雲が全てを覆い尽くすようにその身を大きく広げていた。

黒の粒子を内側に孕み、淀んだ光が硝子を通って侵入する。

咲は机に肘をつき、昏い双眸でただその様子を眺めて。

微かに痛みを主張する目元を誤魔化すかのようにそっと瞼を閉じた。


――もうすぐ、雨が訪れる


硝子を打つ緩慢な雨音が耳に届いて、

爽は机から顔を上げて窓に目をやった。

昼頃からぐずついていた空模様は放課後になった今、

本格的な雨を運んできたようだった。

前方の教壇では語学担当の教師が熱心に授業内容を語っていたが

その声は爽の耳を通り過ぎていく。

爽の意識は、とうに教室という空間から遠く離れていた。

まるで硝子を打ち破ろうとするかのように段々と激しくなっていく雨音が、

記憶の中の光景を鮮明に呼び起こす。

今、思考を埋め尽くすのは。

いつかの雨だれの音と彼女の泣き顔だった。


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