過去ログ - 【安価】京太郎「プロになったはいいけれど……」 第35位【アラフォーマーズ】
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◆rVyvhOy5r192
[saga]
2014/11/22(土) 15:04:07.43 ID:qGijvVXBO
「禁煙席。一人」
店内に足を踏み入れたのは、眼鏡をかけた怜悧な美人。
見た者は、彼女に対して隙のない硬質の精密機器のような印象を抱くであろう。
その所作と佇まいからは機能美が滲み出る。鉄の女、という評価なら強ち外れてはいない。
レンズの奥の不機嫌そうな半眼も眉間の皺も、却ってその優秀さを際立たせていた。
そんな彼女の視線は、店員の青年を見るとき更に尖る。
浮気して別れた元伴侶に、怒りも冷めやらぬ内に中々納められない養育費を取り立てに行くとするならば――女はきっとこんな目線を送るであろう。
そんな、ある種の手本めいた厳めしい双眸。
やがて注文のコーヒーを運んで行く際も、店員は何処と無く居心地が悪そうであった。
「……船久保さん、あの、どっからここを」
「記者が情報知らんで、誰が知ってはるんやろうなァ」
「……」
女性客――船久保浩子の冷たい呟きに、店員の青年は尚更萎縮した。
普段余り見られない青年のそんな態度に、同僚たちは俄に注意を向ける。
立つ瀬がないとでも言わんばかりに落ち着きをなくした青年と、彼にあまり目を合わせずに振る舞う女性。
事件と言うには大袈裟過ぎるが、受け流すには重過ぎる。
「お久しぶりさんです、須賀元プロ」
「えっと……その……お久しぶりですね、船久保さん」
「……浩子でええってゆーてますやろ」
声には若干の呆れとも諦めともつかぬ色が混じったが、それでも依然として固いまま。
差し出されたコーヒーカップに目を落としたまま、船久保浩子はぼそりと漏らした。
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