117: ◆7SHIicilOU[saga]
2015/02/27(金) 23:02:05.42 ID:bfWRFpgTo
―――
響くチャイムの音。ほんの数十分前に聞いたこの音を、
今度はうち一人で聞いている。
「なに? まだなんか用……って希一人だけ?」
あからさまなしかめっ面ででてきたにこっちに
「おはろー」と声をかけると今度は怪訝な顔。
半開きになった玄関の内側からは有言実行
にこっちが作った夕飯が醸し出すお腹がなりそうな匂いが香ってくる。
「なによ?」
じろりと言う擬音がぴったり嵌りそうな見られてしもた。
なんやごっついへこむなぁ、なんて。
「別に、無理に聞き出そうとは思ってないんよ。戻ってきたのはそのためやない」
一応。枕詞としてそう言い訳がましい事をいいながら。
「ただ、にこっちが一人で責任感じてそうやったからね」
「……どういう意味よ?」
声色が少し変わる。やっぱり、うちはそう心の中で呟く。
にこっちは、根本的なところで変わってない。
一人で全部背負いがちなままなんや。
「どうせ、相談をされたのが自分やなかったら。もっと上手く返せただろうとか思ってたんとちゃうの?
幼馴染のことりちゃんや海未ちゃんやったら、同じ生徒会長だったえりちやったら、
似たもの同士の凛ちゃんやったら、純粋で妹みたいな花陽ちゃんやったら。もっと上手く……って」
「……本当、なんでも見透かした様な奴ね。
あんたのそういうところ、嫌いだわ」
半開きだった玄関が、もう少し開いて。
にこっちが外に出てくる。
「でもね、少し間違ってるわ。……私が一番に頭に浮かべたのはあんたよ」
「うち?」
「えぇ、希だったら。なんでも見透かした様な望みだったら。最適解を導き出せたんじゃないかって」
それは、ちょっと意外やね。
うちはそんな風に評価されてたんや。
……実際はそんなことちぃともないのに、
むしろ、穂乃果ちゃんを変に炊きつけた原因ともいえるのに。
そしてそれを打ち明けることが出来ない位、弱いのに。
「私はね、偶然あの場所に居たから相談されただけ。
穂乃果にあの日あの時、あの場所で出会ったから相談されただけ。
希の言う通りよ。私じゃなければ、もっとキチンと相談に乗れたんじゃないかって、不安でしょうがない」
うちの心中を知ってか知らずか、にこっちは懺悔の様に語る。
「そう考えてるうちに、穂乃果にも真姫にも上手く話しかけられなくなって。
なんて声をかけていいのか、助けてあげようにも、また失敗したら、より悪くなったらって、怖いの。
さっきはみんなにあんな事言ったけど、不安なのよ」
日が落ちて、ひんやりと肌をなぞる風がそうさせるのか。
にこっちの口数は増えて、頑なだった態度は今にも崩れそうに脆くて。
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