16: ◆7SHIicilOU[saga]
2014/08/28(木) 20:31:15.61 ID:QKMul3TQo
「真姫ちゃんちょっといい?」
そう声をかけたのは、私が日々悶々と暮らす原因とも言える穂乃果で。
声をかけられたのは練習が終わり、季節柄すでに日も傾きかけた頃だった。
「なによ?」
ぶっきらぼうな声色を装って振り向く、
私にとって、本来こんな調子で言葉を発するなんて事はずっとやってきた事の筈なのに。
気持ちを自覚してからというもの、これで大丈夫なのかと逐一不安になってしまう。
「えっと……帰りどこか寄って行かないかなって」
私の心中など知らず存ぜぬで、頬を掻いて微笑む穂乃果。
勿論知られたら、こんな風に微笑みかけてなどくれないだろうけどね。
「珍しいわね、急に」
言いながら気付く。休憩中に海未が話しかけてきたとき、
そういえばこっちを気にしていた事に。多分、少し聞こえてたんだと思う。
だから、帰る前にって事なのかも。
「いやぁ、凛ちゃんと話してたらお腹が減っちゃって……」
お腹をさすりながら、いつも通りの調子。
嘘を吐いた私に気を遣ってくれてるんだと思うと、凄く申し訳なくて。
「ありがとう」
ぼそっと呟いた言葉に込めた気持ち。
多分違った風に届いたと思う。言外に込めたごめんなさいは、宙に舞って消えていった。
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