過去ログ - 律「澪と寄り道して帰る話」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:05:59.44 ID:Gqx9SXLWo


  ◆  ◆  ◆

 そこでじゃれ合ってる長い黒髪と明るい短髪の二人が
 やけに小さくかわいらしく見えるのは
 二階喫煙カウンター席の窓から見下ろしてる空間的距離ってやつのせいで、
 向かいのビルが伸ばした影と焼け付く太陽光の境目を
 ちらちら踏んだり退いたり飛び越えたりしながら
 ケータイ覗きあってくすくすやってるのが、
 こう、
 小動物的な意味でいとおしくなってしまって、
 ずっと見下ろしてたら急に周りがうるさく聞こえ出したんだ――ちがう、
 プレイヤーの音楽が鳴り止んでただけだった。

 再生し直そうと伸ばした手は、
 クーラーで誰かみたいに喉をやられてたからかな、
 プレイヤーではなく
 結露でべしょべしょになったアイスコーヒーのカップへと寄せられて
 ほとんど無意識でストローに口をつけると
 もう水っぽい薄い味だった。

 四時半の傾く陽差しに透けて見えた薄い色合い、
 もうウーロン茶なんかと変わんない。
 もらったまま入れそびれたシロップを拾い上げて
 半ばヤケで流し込む。あまい。
 さっきの水コーヒーよりは味がしてマシな気がした。
 嘘つけ、
 飲めた味じゃねーだろこれ。



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