過去ログ - エルフが奴隷に堕ちた理由を考えてみたりなど
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[saga]
2014/09/06(土) 18:40:35.36 ID:uMu3uzQDo
閉じたまぶたの裏側に懐かしい故郷が見える。
山のふもとのその村は小さい。
土地は痩せていて実りも少なく、彼や彼の友達はいつも腹を空かせていた。
だが今に比べればずっと穏やかで、安心して過ごすことができた。
冬は小さな暖炉の前で母の歌を聞きながら、寒い夜の長さを思ったものだった。
「森の深くで小さな熊は紅い葉探して歩いてた。小さな足で歩いてた――」
ふと記憶の中の母の歌が現実にも聞こえることに気づいた。
目を開けるとエルフが焚き火の向こう側で小さく口を開いて歌っていた。
澄んで美しい声だ。
決して強い声ではないのに、透明なそれは彼の胸に大きく響く。
母と似ているようで似ていない。
子を守る母親のような包み込む大きさはそこにはない。
それでも彼の心を揺さぶる力はあった。
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