34: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:05:07.90 ID:b1HKoC2c0
雨男が去った後、少女は唐突にわたしの方を向き「アンタ、名前は?」と尋ねてきた。
この危険人物に名前を教えていいものかと、わたしが口ごもっていると、少女は自身の制服のスカーフを左の二の腕に巻きながら、声を荒げた。
「聞こえなかった?お名前なあにって訊いてんのよ。ワッチュアネーム。自分の名前忘れちゃったの?だったら、アタシが思い出させてあげるけど」少女が鋏を鳴らしはじめた。
「ま、待って。待ってください。苗木こまる、です。わたしの名前」わたしが慌てて返答すると、少女は、苗木?と、顔をしかめた。
「それ、本名?嘘吐きは舌、切っちゃうよん」少女が再び鋏を鳴らしたので、ほんとですよ、苗木こまるですよ、と必死に訴える。
訴えが通じたのか、少女は腕を組み、「苗木こまる、苗木こまる……」と、わたしの名前を反芻するように唱えた。やがて、にい、と気味の悪い笑みを浮かべ、言った。
「お風呂と宿、貸してくんない?」
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