70: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:06:07.36 ID:UDVM4aPw0
一切の間を置かず、左の鋏が雨男の脇腹に噛み付いた。雨男は低く呻き、後退する。
更に右手の鋏が雨男の左肩を噛んだ。雨男が後退する。左の鋏が右肩を刺す。後退する。右の鋏が斬りつける。後退。左の鋏が裂く。後退。鋏が啄ばむ。鋏が抉る。
ジェノサイダーは絶叫にも近い哄笑を上げた。口が裂けそうな程、腹が千切れそうな程、喉が壊れそうな程、笑いながら、雨男を刻む。
「アタシは人を殺さない!上等じゃないのよ!」鋏を振るい、雨男の血を飛ばしながら、ジェノサイダーが笑い叫ぶ。
既に火は完全に鎮まり、スプリンクラーの雨は止んでいた。雨男の血霧のみが散る。
「アタシは……」
ジェノサイダーに切り刻まれながら、雨男は壁まで追い込まれ、それに背を預けてようやく立っていた。とっくに手にナイフはなく、全身はそのレインコートごと、フードに隠された顔以外隈無く、ずたずたにされていた。
「殺人鬼を、殺す」
ジェノサイダーが、人を殺す者を、雨男を、自らを、人でないと宣言した。
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