過去ログ - 苗木こまる「雨はハレ」
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8: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:34:20.05 ID:FWRyUZRr0

 しかし、テロリストに封鎖され絶望の監獄と化したビルには、希望が紛れ込んでいた。
 捕まっていなかった兄が、武装集団の砦にわざわざ潜り込んでいた。
 あらゆる超高校級の才能が集う学園の生徒である兄だったが、わたしと同じような凡人のはずだった。だから、恐ろしいテロリスト相手に武器なし策なしの兄が敵うはずもなく、あっさりとやられてしまうのが世の理というものだ。
 世の理はひっくり返っていた。
 兄の才能は死地で存分に発揮された。
 テロリスト達は何かと足を滑らせ、放つ銃弾は都合良く兄には当たらず、味方を誤射した。兄はただただ必死に、わたし達を助けようと駆けずり回っていただけだったが、武装集団はいつの間にか集団でなくなっていた。
 とはいえ無傷で済むわけがなく、ボロボロの兄を見ていて、幸運という言葉があんまり似つかわしくないなぁ、と思った。兄もテロリストも、ただ理不尽な混沌の中もがいているだけのように見えた。巨大な洗濯機の中で水泳大会をしているようだった。
 わたし達が無事逃げられた後、テロリストのリーダーは機動隊に突入されたビルを爆破しようとしていたらしい。国家の兵隊達と心中するつもりはなかったのか、ヘリコプターで飛び立ってから起爆装置を作動させようとしていたそいつは、止めようと追ってきた兄とのもみ合いの末に、頭を打って気絶した。
 離陸したヘリコプターの中で、だ。
 操縦法など知らない兄は離れた公園にヘリコプターを不時着させた。奇跡的な所業だった。



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