過去ログ - 勇者(Lv99)「死にたくても死ねない死なない俺と、殺そうにも殺せない殺したい魔王」
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[saga]
2014/09/05(金) 23:22:22.94 ID:Zt2BxoPL0
二つの黒い影が、魔王の間で幾重にも錯綜する。
黒い魔力が衝突しあい、そのたび漆黒の波紋が空間に浮き上がった。
魔王「……ッ」
全力を出せば、瞬殺できる、今もなお魔王と勇者の力量にはそれほどの差がある。
しかし、殺しても意味がないのだ。
次の瞬間には、全快となった勇者が転移魔法で飛んでくる。
殺さぬように加減する、それがこの幾重の呪いを重ねられ、本能のみで戦う勇者に対しては、並々ならぬ消耗を魔王にもたらしていた。
勇者は両腕を後方に伸ばし、双剣の刃先を魔王へ向け、刺突の構えで迫る。
魔王「っ」
対し魔王、刺突を放とうとする左右の腕へ向け、両手それぞれで暗黒魔法を放った。
二つの暗黒のエネルギーボールが勇者の両腕にそれぞれ着弾する。
勇者「がぁぁぁああああああああああああああああああ!!」
魔王「!」
そんなダメージなど意に反さないように、勇者は刺突を突き出した。
暗黒魔法を貫き、魔王の両肩を掠める刃。
魔王「ッ!」
魔王はとっさに距離をとる。
勇者は暗黒魔法を突き破った両腕をだらりとたらし、獣のような唸り声を上げる。
勇者の両腕、鎧を通して血が滴る。
ダメージはある、しかし
勇者は次の瞬間には、また魔王へむけ、痛んだ腕など気にしないように切りかかった。
荒々しい濁流ように繰り出される二刀流の斬撃をいなしながら、魔王は思考する。
確かに、側近の言うように、認識が甘かったのかもしれない。
刃の掠めた両肩が痛む、こうも容易く傷つけられたことも、その甘さの所為であろう。
切れ味は伝説の剣をしのぐであろう武器、その一刀が、魔王の眼前に迫る。
魔王はそれを掌底で刃の側面から押し上げると、前蹴りを勇者の腹部に直撃させた。
吹き飛ぶ勇者、体を回転させ着地、するとすぐに二刀を構え迫――
甘く見ていた事実は認めよう、傷つけられたことも認めよう、勇者の脅威も認めよう。
―勇者が、足を踏み出すよりも速く、魔王は勇者の眼前へ移動、そして突き出すように放たれる蹴りが、勇者を吹き飛ばし、壁に激突させた。
魔王(だが)
勇者「ッッ」
勇者の目前に、魔王――
魔王の目にもとまらぬ連続蹴りが、勇者に反撃の隙も与えることなく着弾してゆく
その回数は瞬く間に1000を超え、蹴り終えた魔王は、足を払うように振り、足に纏った漆黒魔法を解除する。
足の先から漆黒の飛沫が上がり、それが空気の中で薄まり消える
それと同時に、魔王は足を地面につけた。
それと同時に、勇者の体は崩れ落ち、地面に倒れた。
魔王「勝つのは余だ」
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