過去ログ - 希「死なんといてね、ことりちゃん」ことり「知らないの?…私は死なない」
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324: ◆Qe7X7xrNvI[saga]
2014/10/04(土) 01:57:29.42 ID:x8/BU2CNo
結局、過労だったのは事実だったみたいで。

数日もせずに彼女は退院した。

それは良かったんだけど、その翌日。

彼女は屋敷に、女の子を連れて来たのだった。



ツバサ「…真姫。彼女は…?」

真姫「えぇ。今紹介するわね。…さ、自分の名前、言える?」


あんじゅ「はいっ!優木あんじゅ!12歳です!」

あんじゅ「好きな食べ物はおそうめんで、将来の夢はスーパーアイドルになることです!」



彼女はどうやら、貧乏だった両親に借金の担保として捨てられ、そのまま逃げられたらしい。

そして自分が捨てられたのにも関わらず、その子は元気だった。

どうしてそんな社交性のありそうな孤児をうちに連れてきたのかと訪ねてみたら、

どうやら真姫も最初は経営する孤児院に預けようとしたのだけど、

なぜかその子は真姫に異様に懐いてしまったようで、どうしても離れたがらなかったそう。

だったらこの家も既に孤児院みたいなもの、と5人目の家族として迎えることと相成ったのだった。



英玲奈「その服は…、真姫が着せたの?」

真姫「うぅん。彼女も持ってたものよ」

ツバサ「…にしては、その…、なかなか豪華なお洋服ね。貧乏だったんじゃ…」

真姫「それがね…」



彼女の両親は貧乏ながら、その子に対して出来るだけの贅沢をさせてあげてたのだという。

かわいい服を与え、綺麗なアクセサリを与え、自分たちの生活も切り詰めながら腹が満たされる程度の食事も毎日与え続けた。

彼女を捨てたのも、これ以上自分たちの下にいてもその子は幸せにはなれないと判断してのことだろう、と真姫は語った。

なるほど、私や英玲奈と違って表情が豊かなだけある。

その子は自分の夢に違わず、アイドルに似つかわしい可愛らしい笑顔を持っていた。



英玲奈「…ほう、お前はあんじゅというのか」

あんじゅ「うぎゅっ…。な、なんか怖いですお姉さん…」

英玲奈「お姉さんではない、英玲奈と呼ぶがいい。あんじゅ」

あんじゅ「え、英玲奈…?」

英玲奈「おー、そうだそうだ。んー、かわいいなあんじゅかわいい」

あんじゅ「ひゃああああああ髪の毛くしゃくしゃしないでええええええ」



どうやら英玲奈はあんじゅを気に入ったみたい。

そんな微笑ましい光景を見てると、少し前までの憂鬱が嘘のように霧散していくような気がして。

だけどそれは、ただの気のせいで。

その少し後に、私は。

人生でこれ以上ない喪失を、味わうこととなる。


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