過去ログ - 酢乙女あい(15)「『乱雑解放』【ポルターガイスト】を調査しますわ」
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343:>>1 ◆aMcAOX32KD1b[saga]
2015/08/01(土) 00:19:22.87 ID:tQh6Joyo0
パーティ当日、開始一時間前の酢乙女邸のキッチンにて。
パティシエのポールはその日に出す分の調理を一段落させるとSPの赤崎、青山の二人と話していた。

「それで、彼は来てくれそうなのか?」

赤崎と青山の二人は(正確にはお嬢様に仕える者のほぼ全員が)今日開かれるパーティにお嬢様の想い人である少年を参加させようと動いていた。
何故ならそのパーティはお嬢様の未来の伴侶を選ぶ為のものであり、この家に長く働いている者達にとっては
お嬢様に想い人である幼馴染が居る事は周知の事実であったからだ。
だがそれには幾つか問題があった、まず件の少年はごく普通の、父親は中小企業のサラリーマン母親は専業主婦という一般家庭に産まれた一般人、いわゆる庶民であった事だ。
世界中の経済を動かす名士に、王侯貴族や為政者が参加するパーティに自然に加わる身分ではなく、彼に招待状は送られていなかった。
次に、これがいつも通りのパーティであれば、お嬢様の友人として招く事も出来たかもしれない。
実際、彼は何度か他の友人達と共に酢乙女家のパーティに参加していた。
しかし『御家の為の婿選び』が目的となってしまってはそれもできなかった。

「ああ、黒磯が休暇中で助かった」

奇しくも十年前の今日、『お嬢様が初めてねがえりをうたれた記念日パーティ』に
件の少年はSPの一人として参加しアクシデントからお嬢様を護っていた。
当時彼はお嬢様付きのSPである黒磯に弟子入りしていたらしい。
その日の彼の実績と、黒磯が今日のパーティの警護に参加出来ない事が合わさって、一般人である少年をよぶ名目が奇跡的に立ったのだ。

「そうか、なら後はあいお嬢様次第だな」

世界中の名士が集まったパーティ会場で、交際なり婚約なりを宣言してしまえばそれはもはや既成事実となる。
酢乙女家の本意とは違っていても、取り消しはほぼ不可能だ。
かなり無茶苦茶な、確実とは言えない賭け。
しかしお嬢様が一般人である想い人の少年と結ばれるにはそれしかないだろう。
本来ならば社交界やら上流階級やらとは無縁であったろう一般人である少年をまきこんでしまう事に、何も思わないわけでは無いが……

「……上手くいってくれることを祈るばかりだな」

主の長年の想いをとげさせようとする者、集まる権力者を狙う者、それを人知れず阻止せんとする者……
開始まで一時間をきったパーティ……その会場たる酢乙女邸には、様々な人間の思惑が集まり交叉し、渦巻いていた。


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