過去ログ - 津田タカトシ「第2回女子会をやってきたんですか?」
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10: ◆WO7BVrJPw2[saga]
2014/09/05(金) 23:45:46.87 ID:yvTw1uG9o

「…………」

そういえば、ガラス越しに今と近い状況になったことはあっただろうか。
あの時も一瞬動けなかった自分がいた。
その一瞬はとても長く感じられ、友人たちに茶化されるまで何も言えなかった。
なら、その友人たちがいないいまでは?
ガラス越しならノーカウントだったら、ガラスのない今では?
いつの間にか、彼の眼は見られなくなっている。
その代わり、ほんの少しだけ目線の下にある、その唇が気になって仕方がない。
自覚して、逆に恥ずかしくなって顔を上げた。
彼は、代わらず私の眼を見ていた。
その眼は、戸惑いと驚きと―――何かもう一つの、彼の頬を紅くするだけの何かを湛えている。

「つ……」

彼の名前を呼びかけただろうか。だが声にはならない。
私はほんの少し、背筋を伸ばすだけだった。
目は、どちらからともなく閉じて。
私は彼の袖を掴み、唇に当たる感触を紛らわせていた。
誰もいない生徒会室で、私たちは相手の存在を、薄い唇の肌を通して感じていた。

「やはり背は……それ以上高くならないでくれ……」

唇を離して、私は言った。やはり、目は合わせられない。
ただ、今までに経験したことないほど、心臓は高鳴っていて、それでいてとても満たされていた。

「……しづらいから」

とても小さく、相手にだけ届く声で言う。
誰にも聞こえるはずはないのだけど、そうしたかった。

「……ですね」

彼の答えも、同じくらいの大きさだった。
その声は外から聞こえる部活の音や、遠く廊下を走る音などにかき消される。
だがしっかりと。
私の耳に。
私に、届いた。



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