14: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/14(日) 22:21:50.17 ID:4ZFYR2uVO
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窓の外に照る夕焼けが、オレンジを通り越して赤々しくさえあった。
男は一人、自室の執務机に向かって空のケースを眺めていた。
上等な意匠の小箱を開くと、そこには五ミリほどの窪みがある。
ちょうど、そう。
例えば指輪などを収めるのに、ちょうどよい窪みだった。
「赤城」
指輪を預けた想い人の名を呼ぶ。
男は無意識のうちに、左の薬指を右手でまさぐっていた。
そうしていると途方もなく愛おしい気持ちが込み上がってくるのだ。
そう、途方もない愛おしさと、そしてもう一つ――
「提督、加賀です」
ノックと同時にそう呼ばれて、男は現実に引き戻された。
提督。
この鎮守府の最高司令官たる、自分を指す言葉であった。
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