227: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/27(月) 23:40:23.87 ID:gTKzosiyO
「泣いても、よろしいんですよ?」
「泣かんよ。日本男児は泣かないものだ」
宵闇に染まるミッドウェーの海を背景に、ぽつ、ぽつ、と音が二つした。
男が軍帽のつばを引っ張って目許まで下ろす。
女は男の顔を覗きこもうとして、なぜか失敗した。
「おや、参ったな。また雨か」
雨だった。
冷たい雨だった。
あたたかい雨だった。
悲しい雨だった。
優しい雨だった。
「ええ。雨ですね」
「せっかく上がったと思ったのにな。困ったものだ、なあ赤城?」
「ええ、本当に……困った、ものですね」
他のどこにも落ちることなく、ただ男と女の足下だけを濡らす、そんな雨だった。
完
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