過去ログ - 和「フランスより」咲「愛をこめて」
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105: ◆CU9nDGdStM[saga]
2014/11/28(金) 00:52:54.95 ID:rRVkEB150
翌朝の目覚めは、すっきりとしたものだった。
咲「うーん……」
程よい弾力のベッドの上で咲は大きく伸びをする。
天井まである細長い窓からは柔らかな日の光が差し込んでいた。
噂どおり、パリはまだまだ寒い。
しかしこうして見る日差しは明らかに春の色だった。
?「オハヨウ!」
身支度を整えて地下の食堂まで降りると、陽気な白人男性が片言の日本語で出迎えてくれた。
彼がこのプチホテルの管理人兼マダム・ミチコの夫である。名をカルロといった。
カルロ「オレの爺さんはミラノからこの国にやってきたんだ。それからはずっと家族でこのホテルを切り盛りしてきたのさ」
アメリカほどではないがフランスもまた移民の国である。
ただし彼らの立場は決して楽なものではない。
自国民の利益を第一に守るため、法律や社会慣習に厳しいものがあるのだ。
ミチコ夫人と結婚するにいたったのは、そういった「どうしようもない移民の哀愁」をお互いに共有できたからだという。
望んでこの国にやってきたけれども、その全ての苦労に納得できるわけではない。
そんなやりきれない気持ちを抱え、この夫婦はパリを乗り越えて――やがて二人には共通の夢のようなものが出来た。
カルロ「何でもしてやれるわけじゃない。けどこの街にやってきた『余所者』達のちょっとした駆け込み寺になれないかなってさ」
パリで生活するには住む場所を決めるのが全ての基点である。
ところが東京以上に深刻な住宅不足に陥っているパリで、外国人がアパルトマンを借りるのは容易ではない。
1ヶ月以上かかることも普通にあるらしい。
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