過去ログ - 和「フランスより」咲「愛をこめて」
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14: ◆CU9nDGdStM[saga]
2014/09/16(火) 00:35:13.78 ID:IfVJEPyJ0
咲(ななななんなんなの、この電車は!)
咲は荷物を抱えながら、隅っこでふるふると震えている。
それは咲が今までに乗ったどの電車よりも古くて汚く、危なげな空気に満ちていた。
シートのほとんどは薄汚れていて、ところどころ破けている。
窓は砂埃で灰色に曇り、床にはゴミがたくさん落ちていた。
目線をそらせばよくわからないラクガキが目に入る。
人はあまり乗っていなかった。
咲のような旅行者が数人、やはり心細そうに隅っこに固まっている。
その中に余裕綽々で座っているのが、ひとりの若いフランス人だった。
肌の色が濃いので移民かもしれない。
荷物を何も持たず、ガムをくちゃくちゃと噛んでいる様がどうにも恐ろしかった。
そんな乗客は、駅を過ぎるごとに数を増していく。
中にはフランス語で何かをしゃべりながらあからさまに旅行客を哂っている者もいた。
咲「……っ」
咲は、手にした大き目のボストンバックをギュッと握り締める。
荷物を少なくしたのは正解だったかもしれない。
元々服装に気を使う方ではないし、現地で買うのも面白いと思って数日分しか用意してこなかったのだ。
例のヤバそうな乗客の視線は、常に大きなスーツケースを携えている人々に向けられていた。
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