過去ログ - 和「フランスより」咲「愛をこめて」
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188: ◆CU9nDGdStM[saga]
2015/03/12(木) 22:19:57.42 ID:QS4zXBMr0
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咲が話を終えた時、すでに日は傾き始めていた。
ガレットはとっくに食べきって、デザートに頼んだクレープが半分皿の上で冷えてしまっている。
飲み物はシードルからカフェオレに変わっていた。
憧「なるほどね。そんな事があったんだ……」
ぽつりとこぼれた憧の言葉に、咲は無言で頷く。
六年間の疎遠は、よくある自然の成り行きではなかった――咲が招いたことである。
「仲のいいチームメイト」のはずだった和との関係を咲が断ち切ったのは、高校一年生の夏。
インターハイ真っ盛りの頃だった。
団体戦で優勝を決めた清澄高校だったが、和の父はそれで満足はしなかった。
個人戦で、和一人の力で頂点を掴まないと東京の学校へ転校させると言ってきた。
もう後がない和は個人戦で優勝することを誓い、
咲や皆と離れたくない一心で個人戦準決勝の舞台まで上りつめた。
そこで和はともに勝ち進んできた咲と対戦することになる。
咲は、和が負けると転校させられる話を偶然知ってしまい、和と全力で勝負することに躊躇する。
思い悩んだ咲が出した結論は――――和への援護。
和に勝ちを譲り、自らは敗退するというものだった。
その後決勝戦が終了し、和は個人戦で2位という成績をおさめた。
優勝はできなかったものの、全国2位という好成績に和の父も漸く満足したのか、
結局和の転校の話は無くなった。
だが喜ぶべき和の心は酷く荒んでいた。
どんな理由であれ、咲に手を抜かれたという事実が心に突き刺さっていたのだ。
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