過去ログ - 和「フランスより」咲「愛をこめて」
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2: ◆CU9nDGdStM[saga]
2014/09/16(火) 00:08:17.40 ID:IfVJEPyJ0
咲は途方に暮れていた。

何かの間違いではないかと思ってもう一度手にした地図を見る。

少しくたびれた紙には、味気ないフォントで住所とホテル名が印字されていた。

そのどちらもが目の前の看板と全く同じである。

咲「……写真と全然違うんだけど」

ぼそりとこぼれた言葉に応えてくれる者は誰もいない。

咲が出国前にサイトで見たのは、小洒落た建物だった。

古い石造りで、少しむらのあるグレーが歴史を感じさせる。

随分と小さそうだったが、どうせ一人で泊まるので気にならなかった。

それよりもプチホテルという響きに魅かれる。

日本の画一的なホテルよりよほど面白そうだった。

ところが咲の目の前にあるのは――今にも崩れ落ちそうな、おんぼろ宿である。

外壁には無数のひびが入り、ところどころカビのような黒い汚れがこびりついていた。

路面を見れば、誰が捨てたのか無数のゴミが散らばっている。

咲「こんなところで最初の夜を過ごすなんて……」

咲の口から深いため息が吐き出された。

元々疲れきっていた体がますます重くなる。

咲「はぁ……」

後悔しても、もう遅い。

大体この旅行には最初からケチばかりついていた。


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