過去ログ - 和「フランスより」咲「愛をこめて」
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242: ◆CU9nDGdStM[saga]
2015/07/16(木) 20:32:32.96 ID:tUbr3Wd40
咲「その人に比べたら、自分は一体……一度そう考え出したら、もう何も書けなく、なって」
いつの間にか溜まっていた涙が、咲の意志を無視してぽたりと零れ落ちる。
咲「その人のエッセイは、根性で書き上げたんだけど、あとは……もう、何も」
和「……」
咲「パリに来ても、周りはみんな仕事に一生懸命な人ばかりで……」
咲「貴子さんもシンガポールの人たちも、和ちゃんやお店の人たちだって、誰もがみんな輝いていて」
咲の脳裏には、この数日間のことが目まぐるしく蘇っていた。
異国の地で、それぞれの人生を堂々と歩んでいる人たち。
咲「皆に比べたら、自分は本当に情けないなって……ここへ来て、ずっとそう思ってた」
シンガポールのリーダーから語られた「自分」は、ある意味咲が理想としていた姿で――
だからこそ現実との差を叩きつけられた気がしたのだ。
和は相変わらず何も言わなかった。
ただじっと咲を見つめている。
その視線が心に痛かった。
咲「呆れたでしょ」
咲にとって、和もまた輝いている一人だった。
確かに今は大きな壁にぶつかっているかもしれない。
けれども彼女が真剣に菓子作りに取り組んでいることは、あの汚れたテーブルを見ればわかる。
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