過去ログ - 和「フランスより」咲「愛をこめて」
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30: ◆CU9nDGdStM[saga]
2014/09/16(火) 01:18:00.92 ID:IfVJEPyJ0
パリは薄暗がりに染まりつつあった。

この街では蛍光灯の白い光にはあまりお目にかからない。

黄色味を帯びた柔らか光が、無数に瞬いては建物を照らしている。

それは確かに写真やテレビで見たような幻想的な光景だった。

エマ「綺麗でしょう」

咲「えぇ、本当に……」

ほぅと感嘆の吐息を漏らした咲の耳朶を、エマの柔らかい声が掠める。


いい夕暮れだった。

気温は確かに東京よりもうんと寒いが、美しい光景に興奮しているせいか気にならなかった。

エマの話は相変わらず面白く、咲はところどころでクスリと笑ってしまう。

エマ「路地に入るけど、こっちが目当ての店の近道なのよ」

誘われて足を踏み入れたのは、石畳の小さな路地だった。

あのカフェがあったところに雰囲気は似ているが、それよりも少し道幅が狭いように思える。

咲「どんなお店なんですか?」

エマ「美味しいわよ。フレンチじゃなくてスパニッシュなんだけど」

エマ「とにかくエビや魚が最高なの。日本人はシーフードが好きなんでしょ?」

咲「そうですね。私も大好きです」

エマ「あの店の茹でエビを食べたら、咲は日本に帰りたくなくなるかもね!」

咲「ふふ……っ」


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