305: ◆WNrWKtkPz.[saga]
2014/10/27(月) 19:59:14.67 ID:6uNkr/f60
――――
――
俺は恵まれた環境で育った。
喧嘩をすることもなく明るい家庭だ、と自信を持って自慢できるくらいだ。
現在も両親ともに健在で、今年10歳になる弟もいる。
たまに不真面目なときがある俺を責めることもなく、自由にさせてくれている。
そんな両親を悲しませないよう、俺は悪事を働くことはしなかった。
心に余裕がある俺はたまに人助けをして、人に感謝され、そして家族を喜ばせた。
弟には俺がヒーローに見えるらしい。
『俺もお兄ちゃんみたいになりたい!』
きっと弟は良い子に育つだろう。
こんな輝かしい家族に泥を塗るわけにはいかないだろう――
『ウソツキ』
――やめろ。
俺の目の前にあった楽園が一転して地獄へと変わる。
血まみれになった少女が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
――やめろ。
一歩ずつ着実にその少女は近付いてきている。
『ウソツキ』
やめてくれ――――
――――
――
「……っ!? ハァ、ハァ……」
俺は息苦しさで勢いよく起き上がった。
「ハァ……ゆめ、か――」
一気に脳が覚醒し始め、今まで何が起きたのかということを思い出させる。
「俺は――ッ!!」
殺した。
姫萩咲実をこの手で確かに殺したんだ。
罪悪感と恐怖で震えだした身体を止めることはできなかった。
「――痛ッ!?」
無意識に動き出そうとした身体が、痛覚によって遮られた。
どうやら右足の状態が更に悪化してしまったらしい。
あの時は火事場の馬鹿力で動いていただけのようだ。
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