385: ◆WNrWKtkPz.[saga]
2014/11/23(日) 00:55:28.82 ID:BsJS4TKZ0
「それで、どこへ行きましょう?」
「あなたのオススメの場所へ」
「……これは困りましたなぁ。長年この仕事をやってますが、その目的地は初めてですので」
運転手はあれこれ迷うと、指を鳴らして発進した。
車は来た道を引き返していた。
そして、運転手は私が乗った場所――実家の前に止まった。
「どういうこと?」
「……長いことこの仕事をやっているとね、色んな人を見るわけですよ。お客さん、“生きる目的”っていうのを忘れているんじゃないですか?」
運転手の声色が少し変わった。
「あなたの事を一番知っているのは“ここ”ですよ。色々考えましたが、ここが一番のオススメです」
運転手は扉を開けてこちらを見た。
「お気に召さなかったでしょうか?」
「……いいえ。あなたのこと、見くびっていたようだわ」
私はかなり多めの札を渡して車から出た。
「それでは、メリークリスマス――」
運転手は柔らかい笑みを浮かべて車を発進させた――
「……生きる目的なんて、見つかるはずがないわ」
確かに一番求めているそれを、運転手は当てて見せた。
しかし、それが手に入ることは一生無いと分かっている以上、私にはどうすることもできない――
“彼”との約束を果たすために、あまたもの血に染まったあとに残ったものは、生という名の地獄だった――
「彰……私、いまもちゃんと約束、守ってるから。そして、これからも――」
【END:代行キラークイーン“9”】
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