87: ◆WNrWKtkPz.[saga]
2014/09/19(金) 15:10:28.77 ID:xzwMvKlI0
(駄目だ、逃げないと――)
俺は麗佳に指で逃げるように指示をする。
麗佳は少しずつ正気を取り戻して静かにその場から離れはじめた。
(ごめん、な……)
どうしてああなったのかは分からないが、少年を見捨てる選択をした自分に嫌悪感を抱く。
それでも、自分や麗佳のことを考えると救いに行くことはできなかったのだ。
『ぅぁ……いや、だ――』
今後もこのような苦渋の選択を強いられるようになるのだろうか。
『うえええぇぇうぁあああああああああッッッ――』
救うものと捨てるものを選ばなければ、このゲームは――
俺は背後から迫る断末魔の叫びを聞きながら、歯を食いしばった。
俺は、このゲームで生きていけるのだろうか――
【06:50】
俺たちは少年を見捨てて戦闘禁止エリアに退避していた。
「大丈夫か?」
俺は麗佳の隣に座り、ホットコーヒーを渡した。
「ありがとう。……ふう」
コーヒーを口にして一息つくと、少しだけ顔色が良くなった気がする。
「麗佳の言った通り、このゲームは本当、だったな……」
なにをいえば良いのかわからないが、取りあえず話題を振ってみた。
「えぇ、そうね。十分すぎるほどの光景だったもの――」
「……救えなかった。自分と麗佳の命のことを考えたら、前に進むことが出来なかった」
「彰はなにも悪くない。悪いのはこのゲームよ。ずっと気にしていたら、きっと気が狂ってしまうわ」
「……そうだな」
やはり麗佳は俺よりも1つ、2つ上の視点から物事を考えている。
そんな麗佳に意見や考えかたに俺は助けられている。
「ん……彰、煙草吸ったでしょ?」
「あ……いや、これは、その。こんな状態になったらしょうがないかなって」
麗佳はジトッとした目でこちらを見てくるが、すぐに溜め息をついて寄り添ってきた。
「今回ばかりは、許してあげるわ。でも、吸いすぎはダメよ?」
「合点承知!」
「……前言撤回するわ。今後禁煙で」
「ごめんなさいそれだけは許し下さいお願いします!!」
久し振りの麗佳の笑顔を見て、俺の心は少し明るくなった。
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