28: ◆297.OiRF9k[saga]
2014/09/24(水) 05:36:49.26 ID:jIaLhw9Eo
「た、貴音」
おれは貴音のその気遣いに、思わずコーヒーカップを持つ手を感動に震わせた。
貴音がおれの手元のコーヒーカップを見、思い出したようにいった。
「あの、あなた様……このお茶碗、初めて目にしたでしょう?」
「ム? たしかに、この柄は初めて見た」
おれは貴音のその言葉で、改めて手元のコーヒーカップに注目した。
白磁器の、すらりとしたフォルムの上に、透かし彫で一輪の花が満開に咲いていた。
「これは綺麗なデザインだなあ。この花柄は、なんの花だろ?」
「それは牡丹。わたくしの一番好きな花です。
ずっと前に、お揃いの一品をぎふとしょっぷで見つけたので購入しておいたのです。
やっと、此度に初めて使用できて……とても喜ばしいことです」
「ん、今まで一回も使わなかった?」
「今まで――その、珈琲を淹れる機会が無かったものですから」
「え、貴音が?」
「ええ。今までは小鳥嬢が淹れていらしたので」
「ンン――? ム」
貴音との会話に違和感を覚えたおれは心臓の脈拍が一段と早くなった。
おれは出来るだけのさり気なさを装いながら、これからは貴音がコーヒーを淹れてくれるだろうか
せっかくだから貴音が買ってくれたこのコーヒーカップで一緒に飲もう、と提案した。
「はい。喜んで」
と貴音はいった。
ワーオ!
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