過去ログ - ミュウツー『……これは、逆襲だ』 第二幕
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404: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2015/10/05(月) 01:48:34.14 ID:f3Lfubnuo

あの場を去ると決める直前のことだ。

孵化したポケモンを前にして、男は笑っていた。

声をあげ、明るく笑っているのに、泣いていた。

目から涙をぼろぼろと流し、ときおり袖で拭いながら。

『よく来た』とか、そんなことを口にしていた。


ミュウツーが帰ることを決めたのは、その姿を見たからだ。

目の奥がちりちりと痛んだ。

帰るという提案に、友人たちは誰も反対しなかった。


ミュウツー(あの男は、なぜ涙を流していたのだろう)

ミュウツー(待ちに待った卵の孵化を見て、喜んでいるはずなのに)

ミュウツー(悲しくなどないはずなのに)


あれ以上、あの場にいつづけるのは憚られた。

『いたたまれない』とも、『見ていられない』とも少し違う。

どうにも耐えられなくなった、としか言いようがない。


ミュウツー(ニンゲンが涙を流すのは……悲しいとき、だったと思うが)

ミュウツー(……?)

ミュウツー(どうして、私はそんなことを知っているんだ)


彼らの、あの空間を妨げてはいけないような気もした。

誰の領域だとか、『なわばり』だとか、そんなことはどうでもよくなっていた。


ミュウツー(……もともと、縄張りを主張するために姿を見せたのではないからな)


ジュプトル「ねむ」

ミュウツー『だろうな』

ジュプトル「おそく おきてるの、い いつもは……しないし」

ミュウツー『お前は、特にそうだろう』

ジュプトル「くらい、ねむい、ねぁい」


声や話しぶりには、濃い疲れが滲んでいた。

口調は少しおどけている。

不満を口にできる状況に、ようやくなったということだ。




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