過去ログ - にこ「余命幾許もない私と」真姫「私」
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44: ◆gDTYF1szXU[saga]
2014/10/26(日) 01:48:38.50 ID:SyN6Q9a4O
しっとりと濡れた体温に包まれた指先は、けれどそれを心地よいとさえ知覚した。

(真姫ちゃんのこと、本当に好きになれたら良かったんだけど……)

先程とは逆に、今度は真姫ちゃんが私の腕を引いて歩く。

健気で一生懸命な彼女の気持ちに、けれど私は紛い物の気持ちでしか応える術を持たない。

果たして紛い物の想いであっても、熱すれば燃えるのだろうか。

もしそうであるなら、少しは救われるかもしれない。


(……なんてね)

どんな言い訳をしても変わらない。私は残りの自分の時間を守るため、真姫ちゃんを嘘で包み込んで騙した。

だって邪魔だったんだもの。仕方ないじゃない。

(でも大丈夫。最期まで騙し通してあげるから)

差し掛かった別れ道。特に何かを話していたわけではなくとも、ふたりで歩く帰りの景色は瞬くような早さで通り過ぎていく。

「それじゃ真姫ちゃん」

また明日──と私が告げるよりも先に。


ちゅ、と。


ふんわりとした、けれど熱っぽい水音で言葉を遮られた。

「に……にこちゃん、また明日っ」

逃げるように背を向けて走り去るあの子の潤んだ瞳と上気した頬の色だけが、網膜に張り付いた残像のようにいつまでも私の中でゆらゆらと漂い続ける。

「……油断した」

向こうからのキスなんて、あと1ヶ月は先のことだと思っていたのにね。


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