2:山梨最高 ◆31XYrFalkuo5
2014/09/27(土) 20:58:11.71 ID:4btJ32Bz0
帝都東京、筑土町の一角には銀楼閣という今風のビルヂングが建っている。
そのビルヂング内には、英国製の背広を着こなす鳴海という伊達男が開いている鳴海探偵事務所がある。
その事務所で、朝食の珈琲のために湯を沸かしながら帝都新報を眺めている鳴海の目が、一点に止まった。何かの記事に興味を引かれた訳ではない。紙面の奇妙な空白に目を引かれたのだ。鳴海がこの奇妙な空白に気付いたのは丁度一週間前、尋ね人欄を流し読みしている時だった。その時は紙面の都合かと思い気にも留めなかったが、今日再び尋ね人欄に奇妙な空白を見て気が付いた事がある。先週の空白と大体同じ大きさなのである。湯が沸くまでには多少の時間がある。そこらに山積みの紙束から先週の帝都新報を引っ張りだし広げると、そこには記憶のとおりの空白が見つかった。
見比べると大きさが大体同じどころではない。ピタリと同じであった。興味を強く引かれ、その先週さらに前の週と帝都新報を調べたが五週連続全く同じ空白が見つかった。それより前の帝都新報は処分済で確認はできなかった。空白の謎に思いを馳せながら珈琲を煎れ、トーストを焼きバターを塗っていると、いつも通りの学生服に外套を羽織った部下、葛葉ライドウが、黒猫と共に姿をみせた。同時に、探偵に相応しい洞察力で机の上に並んだ新聞紙に気が付いたようで視線がそれらに注がれている。
鳴海「おはよう、ライドウ。この帝都新聞の束はね、ちょっと気になることがあってね確認していたんだ。とはいっても記事が気になったんじゃない。見てくれここに奇妙な空白があるだろ?少なくとも五週連続で全く同じ空白が……ってゴウトちゃん。どうしたの?ちょっとやめて……」
紙面をライドウに向けると、ゴウト即ちライドウの連れる黒猫が帝都新聞に飛び掛かってきた。新聞紙は猫に押し倒され、ついでにまだ手を付けていない朝食の珈琲とバタートーストが机の上から吹き飛んだ。鳴海に向かって。
鳴海「あーー、俺の朝飯! 何回目だよコレ! ちくしょー」
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