過去ログ - 【艦これ】「提督、榛名は……榛名は大丈夫ですよ」
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59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/14(火) 16:34:28.17 ID:jlF5eTxDO
「貴方が司令官? 宜しくだぴょん!」

「ああ、宜しく。と言っても、君で二人目なんだが」

「二人目? じゃあ、そっちの子が初期艦なのね?」

「そうだな。君と同じ駆逐艦だ。仲良くしてやってくれ」

「任せるぴょん」

彼の周りを元気一杯に跳ね回る姿は、その語尾から想像できる通り、兎にそっくりである。
そして、これこそが彼女の本質なんだろう。あの提督の下では、見ることすら叶わなかった天真爛漫な一面。

「名前を聞いても良いぴょん?」

「あ、えっと……漣、です」

勿論の事だが、あの沈んだ卯月とこの目の前に居る卯月は別人である。

『お前らの代わりなんて幾らでも居るんだ』

代替の効く兵器。言われるまでもない。理解していた事だ。

「じゃあ、さーちゃんだぴょん。これから宜しくお願いしまっす!」

それでも、幾ら別人と自分に言い聞かせても、胸中から湧き出る様々な感情は収まってくれそうにない。

「はい……はい。こちら、こそ……宜しく、お願いします」

「し、司令官! さーちゃんが急に泣き出して……!」

言いたい事は色々あった。例え、伝わらなくても言いたかった。だが、その無邪気な笑顔を前に、感極まってしまった私は何も言えなくなってしまう。

「卯月、君に姉妹は居るのか?」

「上にも下にも沢山居るけど……」

「じゃあ、漣を泣いている妹と思って、君の好きな行動を取ればいい」

「うーん……分かったぴょん」

言われるまで頬を流れる雫の存在に気付かなかった。あれ、私ってこんな泣き虫だったっけと自分で驚く。そんな私を優しい香りが包み込んだ。

「よしよし。さーちゃんは、もう一人じゃないぴょん。だから、好きなだけ甘えてもいいんだよ?」

私を抱き締めた彼女は、妹をあやす様に言う。それが琴線に触れた。
懺悔や謝罪を伝えても困惑させるだけだろう。なら、せめて、今度こそ離さないようにと、あの時は届かなかった手を伸ばし、彼女の身体を強く抱き締める。

ああ、今になって理解した。
私はもうーー過去に囚われなくていいんだ、と。

預けられた想いが、氷解し、身体の外に向かって流れ出す。
声をあげて泣き出した私を、卯月さんは何も言わず、ずっと抱き締めてくれていた。


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