20: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/10/02(木) 19:45:57.76 ID:wGGDvAXqO
ここまで言うのであれば、ここまで深入りするのであれば、僕も同罪に他ならない。
成り行きとは言え、その斧乃木ちゃんに何度も助けられているのは僕だ。
だったら僕にもその一端を担う資格は、ある。
臥煙さんが言った通りに、僕には関わらずにやり過ごす選択肢もあった。
こんな荷物は放り出してしまった方がいいに決まっていたんだ。
でも、放ってなんかおけない。
だって、斧乃木ちゃんの一大事じゃないか。
ここは義理人情の世界ではないが、受けた恩を返せる機会をそのままにしておけるほど、僕はまだ阿良々木暦を終われていない。
「……うちらの事情もよう知らん余所もんが、よくもまぁそこまで吹くやないか」
アホ毛の先端がちりちりと疼く。
肌は発せられる殺気を受けてひりつく。
当たり前だけれど、死と相対するのは何度やったところで慣れるもんじゃないな……。
だけど、ここで退いてたまるか。
「ああ、僕は斧乃木ちゃんのことなんてほとんど知らない。でも、斧乃木ちゃんはもう他人じゃない」
そう、他人ではない。
無口で、無愛想で、たまに口を開いても辛辣で、キャラが安定しなくて、性格の悪い可愛げの欠片もない斧乃木ちゃんではあるけれども。
阿良々木家家訓。
一度でも同じ屋根の下で一晩を過ごした者は、家族だ。
今考えついたが中々どうして間違っちゃいない。
……あれ、そう考えると僕が一夜を共にしたのって、家族と忍を除けばひたぎと斧乃木ちゃんくらいしかいないんじゃね?
羽川は虎の件で僕の家に泊まったらしいけど、その時僕、いなかったしな……。
あの後一ヶ月は羽川の残り香で大変だったと言うのに。
母親(と月火ちゃん)相手に布団を干すのを断固として拒否した程だ。
結果としてお小遣い一ヶ月抜きの刑に処された訳だが、羽川臭の香水を買ったと思えば安いものだろう。
とにかく、だ。
何が可笑しいのか、くつくつと笑いを耐える臥煙さんに、空を見上げて呆れたように息を吐く影縫さん。
「いやいや、いいねえ若いってのは」
「うちの負けや、鬼畜なお兄やん」
「え?」
「おどれの、言う通りや」
本格的に降り出した雨の中、影縫さんは今まで見たこともない表情で、僕を見据えていたのだった。
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