5: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/10/02(木) 19:08:29.86 ID:wGGDvAXqO
「ねえ、鬼いちゃんは夢って見る?」
「夢って……寝る時に見る方だよな?まあ、人並みには」
先程は式神である僕が夢を見るわけなんかない、と言ったけれど、見てしまうものは仕方がない。
人間なら気のせいかな、で済むんだろうけれど、僕みたいな半ば機械的な存在にとっては、体験した事実をねじ曲げることは不可能だ。
どうしたって記録として残ってしまう。
死体は夢を見る、なんて書くとサスペンスかミステリー映画のキャッチコピーみたいだね。
「そう」
……こんなにも僕が仕事に関係ないことで思考を巡らせることはかなり珍しい。
思慮や考察が必要ない時は思考停止している方が多いからね。
考えるのにもカロリーは使うから、その方が省エネになるし。
「それは、羨ましくないな」
でも、僕はやっぱりあの夢らしき何かが気になるんだと思う。
だって、あれはたぶん。
僕の、死ぬ夢だから。
ああ、そうだ。
もうそろそろ、あの時期だ。
「ねえ、鬼いちゃん」
「ん?」
「お願いがあるんだ」
鬼いちゃんはどんな顔をするだろうか。
驚くだろうか。
笑うだろうか。
どちらにせよ、本気に取ってもらうことは難しいように思える。
「なんだ?今日一日、語尾に『にゃん』とつけてくれたら考えてやってもいいぞ」
……未だにわからないな、鬼いちゃんの考える事は。
まあいいか、別に恥ずかしい訳でもないし。
というか、恥ずかしいって感情自体、僕には薄い。
みっともない、とは思うけれど。
「いいにゃん」
この『お願い』が通ったのなら、鬼いちゃんは僕を軽蔑するだろう。
控えめに見て軽蔑されなかったとしても、少なくとも鬼いちゃんはもう二度と僕と会うことはないだろう。
だから、最後のお願いだ。
「僕を殺して」
にゃん。
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