9: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/10/02(木) 19:19:37.96 ID:wGGDvAXqO
こんな実話がある。
とある外国にカールとエレナという名の男女がいた。
カールは妻子持ちだったにも関わらずエレナに一目惚れし、形振り構わず求婚する。
だがエレナは二十二という若さで末期の結核で死に掛けていた。
カールはエレナを必死に治療しようと試みるも、その甲斐なくエレナは病に倒れる。
嘆き悲しむカールは葬儀が終わった後もエレナが忘れられず、墓を掘り起こしてエレナの死体を家に持ち帰る。
腐敗により損壊一歩手前の死体を防腐液に漬け込み、蝋と絹で表面を整え、内臓を取り出し綿を詰め、骨格をピアノ線で補強し、抜け落ちた本人の髪でウィッグを作り、鼻に添え木をし、義眼を作って眼窩に嵌めた。
そしてカールは死ぬまで死体であるエレナと共に暮らしたと言われる。
この話の結末には気分が悪くなるオチがあるのだが、ここでは関係がないので割愛する。
だが、この話も表面だけ見たら美談になるのではないだろうか。
文字通り、死んでも相手を愛する。
生死を越えた愛だ。
女性の方からしても、死んだ後も愛され続けるのは女としての本懐とも言える。
現実にこんなことをしたら罪に問われることは間違いない。
実際、カールも一度見つかって裁判にかけられていると聞く。
彼の行為が正気の沙汰ではない、正しくないことなのはどこからどう見ても一目瞭然なのだが、人の慕情なんてものは物差しで測れるものじゃない。
異常と感じる情愛の形を、肯定は出来なくとも、否定も出来ない。
なんせ、人類が始まって総数約一千億人。
宇宙に出て二次元の三次元化もかくやというところまで進歩した僕ら人類だが、誰一人として未だに愛というものを解明出来ていないものなのだから。
「なんか今日の斧乃木ちゃん厳しくないか?」
斧乃木ちゃんには、明確な『自分』というものが存在しない。
性格も思考能力も与えられたものであり、その精神構造は常識や基礎知識はあれど、何も知らない赤子に近いのだろう、結構な確率で傍にいる人間の影響を受ける。
会った頃より飛び抜けて口が悪くなっているのは、月火ちゃんの影響も勿論、斧乃木ちゃんは千石の件で貝木と会ったらしいので、その悪影響をも間違いなく受けている。
……斧乃木ちゃんが月火の悪影響を受けて、あの屁理屈と我侭で武装したような性格にならなければいいけれど。
いや、もう手遅れなのか?
「ところで、本題なんだけど」
「あ、あぁ」
突然の切り返しに少々戸惑う。
そういえば今日は話がある、と聞いて来たんだった。
「お姉ちゃんがね、臥煙のおば、お姉ちゃんと今日、一緒に来るってさ」
「へえ?」
おい、今臥煙さんのことおばちゃんって言おうとしてなかったか。
……まあいい、下手に突っついて巻き添えを食うのも馬鹿らしい。
臥煙伊豆湖、影縫余弦、戦場ヶ原ひたぎ。この世で怒らせてはいけない女ベストスリーだ。
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