過去ログ - 八幡「やはり地球防衛ロボット"ジアース"は間違っている」
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116:『一瞬だけ、雪ノ下陽乃は仮面を外す。』 ◆WqJdCIH9ivV3[saga]
2014/12/04(木) 23:53:57.90 ID:Jv+flkznO
問われた比企谷くんは困ったように頭をガシガシとかいた。
どんよりとした黒目を右上に向け、何か考えを巡らせている。

これだけ短い間に色々あったのだ、並の人間ならば脳の処理が追いつかず、現実逃避をするのがせいぜいだろう。

だが、彼は見込んだ通りだった。

荒唐無稽なジアースのルールについても、理解したとまではいかないが少なくても上手く受け止めることが出来ている。
ココペリの死体を自ら確認し、冷静に事態の正誤を把握しようとしている。

その場の適応力はかなり高い。もし彼がグローバル企業なんかに入社したらメキメキと頭角を表すだろう。
将来の夢が専業主夫だなんて、勿体無い。家畜のように社会に貢献して欲しいものだ。あ、もちろん褒めているのよ。

さらに虐げられた経験による、確かな洞察力。悪意に敏感で私の表の顔をすぐさま見破る優れた観察眼。濁った目は、それだけ肥えてるということだ。

加えてここ最近の出来事では、精神面でも非凡なものを持つことがわかった。

文化祭ではヒール役を買って出て、不貞腐れた実行委員長に仕事を完遂させた。
材木座くんの死では、容疑者であるという負い目と親しい人間を亡くした悲しみを乗り越えた。

基本は高スペックだと自称するだけある。
私は比企谷八幡を、当初より大幅に高く評価していた。

腐っているから彼だからこそ、出来たことがある。

比企谷八幡は、私の妹である雪ノ下雪乃を変えた。
比企谷八幡は、私の幼馴染である葉山隼人を変えた。

どちらも雪ノ下陽乃という幻影を追っていた人物だ。
であるならば、雪ノ下陽乃という幻影に呑まれた"私"を、変えくれるのではないか。

彼は言うならば自意識の化け物だ。
自分の意思を過剰なほどにしっかりと持つ、私とは対極の存在である比企谷八幡に。

きっと期待しているのだ。
柄にも無く自分を語ったのは、もう自分を騙りたくなかったからだ。
私を、"私"を、見つけだしてよ。

八幡「あの、ひとつ確認にしても良いですか?」

人差し指を一本、前に出した。
焦らすのような仕草に、私はもどかしさを覚える。

陽乃「なんでも聞いて」

食い気味に聞いた私の声は、幾分弾んでいた。
自分が思っている以上に、彼の答えが気になっている。

そのことに、もはや驚いていなかった。
鼓動が早くなるのが分かる。わくわくと、夢を見る子供のように。


……だから。

八幡「雪ノ下、あ、妹の方ですけど」

最初のそこだけで。

八幡「本当は契約してないんじゃないですか?」

私は理解してしまった。


私は彼にとって、雪ノ下雪乃の姉、雪ノ下陽乃に過ぎなかったのだ。

妹というフィルターを通して私を見てきたのならば、どうして彼は"私"を見破れるのだろうか。
目が眩んでいた。考えれば分かることなのに。気がつかなかった。


私の視界は心無しか一段と暗くなったように感じる。
隣ではコエムシが声を押し殺して、でも確実に誰かを嗤っていた。



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