10: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/06(月) 01:55:52.47 ID:l+3sZe1fo
私はその後ろ姿を見送ってから、妖精さんの方を振り返る。
妖精さんは不思議そうな顔をして私を見つめていた。
「えっと…その…よ、よろしくお願いします…」
私が言ったら、妖精さんはニコっと笑って、そのまま私の服の裾を引っ張って洞穴の中に私を連れ込んだ。
妖精さんは洞穴に入ると、さらにピカピカと明るく光って、私の足元を照らしてくれる。
だけど、私はその明りのせいで、見たくもないものも見てしまった。洞穴の中には、何のものかはわからない骨がたくさん転がっていた。
気味が悪くて、思わず足が重くなってしまう。や、やっぱり、食べられちゃうのかな…?
悪いトロールじゃない、って言ってたけど…そ、そもそも、悪いトロールだとしたら、正直に自分が悪いトロールだって言うだろうか?
う、ううん、もしそうだったら、私をだまして連れていくのに、自分は良いトロールだって、そう嘘を言うよね、きっと…
わ、私だまされちゃったのかな…?
そんなことを考えてしまって、私は急に怖くなってきた。そ、そうだ…妖精さんに聞いてみようかな…
「あ、あの、妖精さん…」
私が声をかけると、妖精さんはすぐにこっちを向いてくれる。
「あの…あのね、あのトロールさんは、良い人?悪い人?」
私がそう聞くと、妖精さんはニコっと笑って口をパクパク動かした。うぅ、そうだった…妖精さんは、喋れないんだった…
私は思わず、困った顔をしてしまった。
でも、妖精さんは私の顔を見て気が付いてくれたみたいで、すこしの間だけ首をかしげてから何かを思いついたみたいにふわりと地面に降り立って何かを拾った。
妖精さんはそれを手に持つと、すぐそばの洞穴の壁に、何かを描きはじめた。
人みたいな…あ、でも、羽が生えてる。
「これ、妖精さん?」
私が聞くと、妖精さんはコクコクとうなずいて、その周りの大きな人の絵を描いた。
これって、もしかして…
「妖精さんが、人間にいじめられてるときの絵?」
私が聞いたら、妖精さんはまたコクっとうなずいて、それから絵の妖精さんの体に斜めにピっと線を入れた。
なんだろう、この線…?
私が首をかしげて妖精さんを見たら、妖精さんはちょっと難しそうな顔をしてから、葉っぱみたいな生地で出来た服をクイっと脱いだ。
そこには、大きな傷跡があった…も、もしかして…これ、人間にやられちゃったの?
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